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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > やらせじゃない「イカ天」への期待
昼間たかしの100人にしかわからない本千冊 27冊目

「女のコがパンツを脱ぐ!!」やらせ番組だと思われていた「イカ天」への期待

 実は筆者も、肝心のこのシーンを観たのは、21世紀になってから。YouTubeが普及したことで、ご家庭のビデオテープに保存されていたであろう過去のテレビ番組の録画を、アップする人は増えた。著作権的な部分での是非は別として、なかなか見る機会のない、こうした映像を見ることができるのは貴重だ。

 で、肝心のシーン。文字や言葉で聞くのと、実際に見るのは、まったく別。「バカヤロー!」と突然画面に入ってくるメンバーは、まったくエロくない。演奏シーンは見たことがないのだが、パンクバンドなのだろうか。エロくなくて怖いのである。

 21世紀の今では忘れられた感覚だが、90年代まで世の男子は、新聞のテレビ欄をチェックして、深夜に放送されるエロそうな番組を探すことに余念がなかった。

 朝、テレビ欄で深夜1時頃から『エマニエル夫人』放送なんてのを見つけると、もう一日中、興奮は止まらない。居間に1台しかないテレビで、どうやって家族に見つからないように番組を楽しむか。エロを楽しむためには、知恵と冒険が欠かせなかったのである。

 1995年からフジテレビ系列深夜で放送されていた『THEわれめDEポン』なんて、テレビ欄を見る限り、絶対にお色気番組。だが、期待してチャンネルを回すと始まったのは芸能人による麻雀対決……これ以降、いまだに「テレビを容易に信じてはいけない」という気持ちは強い。

■やらせ番組だと思われていたイカ天

 さて、前述のイカ天におけるパンツ事件だが、この実相に迫っているのはメディア批評誌「創」1989年10月号に掲載された小森収「視聴率は二の次? 深夜TVの奇妙な隆盛」である。ここでは、番組のプロデューサーだった、田代誠のコメントが記されている。

「番組も最初は理解されていなくて、ヤラセの出来レースだと、バンド側が思ったらしいんですね。優勝するバンドは決まっていて、それがプロデビューするために仕組まれた番組なんだと。それで、どうせチャンピオンになれないのなら、メチャクチャやっちゃえということだったのじゃないか」

 実に、この記事で記されているオーディション風景は和やかなものだ。番組前の説明会で「本番中パンツは下ろさないでください」という注意もあるが「必ずしもそうしたハプニングがこれからも起こると、考えているようには聞こえない。そういう注意自体シャレで言ってるようである」とある。

 かくて、番組は隆盛を極め、新たな音楽の世界を繰り広げていくわけである。そこでは、次々と、それまでにないスタイルのバンドが登場したのであった。

 ということで、続く。
(文=昼間たかし)

最終更新:2019/11/07 18:39
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