「プリキュアにはかなわない」という現実を超えて──ラノベレーベルにも乗り出す「キリスト新聞社」の目指す未来
#出版 #宗教 #昼間たかし
けれども、やはりほかの宗教と同じく、サブカルチャーを利用することへの不信感を持つ人も一定数は存在している。
「よく批判もされますよ。そもそもゲームにすることが不敬と考えている人もいます。お寺や神社と一緒で、ポケモンGO禁止の教会もありますしね。また『バイブルハンター』では、エヴァのイラストで肌の露出が多いというクレームが。聖書に忠実にすると、なんにもつけていないんですけどね……」
ともすれば、古色蒼然たる偏狭なクレームと受けとめることもできる。けれども、松谷はそれにいちいち腹を立てたりはしない。
「まあ、そんなくだらないことで炎上してはアレなんで、気を使ってはいますけど……」
批判は批判として粛々と受け止めて、我が道を貫く姿。それは、決して自分のやっていることに間違いがないことの確信があるからだと思った。
そんな状況の中で取り組まれているライトノベルの公募は、意外に注目を集めていると、松谷は言う。1週間で30作品あまりの応募があったというのだ。
──やはり、文字数などの点でハードルを低めに設定しているからではないでしょうか?
「いえ、もともとハードルは高いと思うんです。舞台がミッションスクールとか、キリスト教の用語が出てくるラノベはたくさんあるわけで、どう差別化するかが課題だと思っています。そのため、キリスト教の理解を深めるための作品を条件にした。そうじゃなかったら、フツーのラノベになってしまいます」
──では、どのような作品を求めているのでしょう。
「聖書をラノベ風にしたものとか、現代におけるキリスト教そのものを舞台にしたラノベ。キリスト教系の学校とかを舞台にして、面白おかしいだけじゃなく、根本には思想があるといいなというのが、希望ではあるんです」
ゲームがそうであるように、人によっては「不敬」と思うまでに、これでもかというほどに、面白おかしい路線を走っている。でも、そんなことができるのも、ちゃんと芯の部分があるからだと思った。
■本物の教会でコスプレ撮影会も……「いのフェス」
そんな松谷の思いが如実に表現されているのが、キリスト新聞社が協賛に名を連ね、年1回各地の教会で開催されているイベント「「いのり☆フェスティバル(いのフェス)」である。
2011年に始まったこのイベントは、キリスト教に関係する催しやフリーマーケットで構成されるもの。松谷自身も実行委員として参加しているのだが「有志による実行委員会」という形を取っているだけに、さらに振り幅が大きい。毎年のチラシは、ほとんど同人誌即売会のノリで自ら「教会版コミケ」という表現も。昨年、名古屋で開催された時のチラシには「天国無双」と、最近人気の作品へのオマージュとおぼしき煽り文まで記されている。
そして、10月9日に開催される今年の「いのフェス2017」では、会場となる教会でコスプレ撮影会もできるというのが、売りになっているのである。これまで、結婚式場などのチャペルでコスプレ撮影会というものは存在した。けれども、今回は本物の教会。それも公式にこんな文章で告知している。
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コスプレ交流撮影会
「ホンモノの教会で撮ってみた♪」
実際に礼拝が行われる場で写真が撮れるまたとない機会。
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サブカルチャーを用いた、変革へ向けての鮮烈な爆発。それは、10年後、20年後、どういう結果をもたらすことになるのだろうか。
(取材・文=昼間たかし)
■聖書 × トークメーカー ライトノベル新人賞
http://talkmaker.com/info/303.html
■いのり☆フェスティバル
http://www.inofest.com/
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