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日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 『聲の形』公開めぐり、温度差
中国“ヤバい”漫画家・孫向文の「日本アニメ文化論」

『聲の形』はいじめっ子を美化する作品? 公開めぐり、中国政府と観客に温度差が生じたワケ

■日本をいじめ体質だと批判する、いじめ国家・中国

 このような世論がまかり通っていますが、チベット民族・香港に対する迫害、富裕層の貧困層に対する搾取、公権力による一般人いじめ、共産党内部の内ゲバ、在中外国企業に対する嫌がらせ、自国周辺の小国に対する攻撃など、実際の中国社会には、いじめ気質がまん延しています。ある中国人アニメファンは環球時報の社説を受けて、「いじめられっ子に『いじめられることを反省しろ』というのが、典型的な中国の教師だ」という反論をネット上に寄せました。この意見には僕も思い当たる節があり、小学校の頃、僕は成績が悪いことが原因でクラスメイトからいじめられていたのですが、担任教師はその様子を見ていじめっ子をしかりつけるのではなく、「お前の成績が悪いから、いじめられるんだ。反省しろ」と僕に言いました。強い者がはびこる一方、弱い者は徹底的に虐げられるのが中国社会です。

 僕は、映画公開前から漫画を全巻読破するほどの『聲の形』ファンです。日本での公開時、同時期に同じくアニメ映画の『君の名は。』が空前の大ヒットを記録しましたが、僕自身は『聲の形』のほうに共感します。『聲の形』は障害者やいじめがテーマという理由から、いったん雑誌掲載が見送られたという経緯を持ちます。このような風潮は、リベラル層が、日本の言論、マスコミ界の上層部に多く存在しているためだと思います。彼らの過剰な配慮により、名作が封印される可能性があったのです。

『聲の形』は、障害者、いじめ問題を世間に問いかける内容であり、差別を助長するものではありません。しかも、登場人物は全員架空であるため、個人を中傷する内容ではないのです。行きすぎた表現規制は、漫画家、小説家、映画監督など、多くのクリエイターの可能性を奪う行為だと思います。

『聲の形』はいじめっ子を美化する作品? 公開めぐり、中国政府と観客に温度差が生じたワケの画像2

●そん・こうぶん
中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)、『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)、『日本人に帰化したい!!』(青林堂)がある。
<https://twitter.com/sun_koubun>

最終更新:2017/10/01 16:00
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