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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 吉田豪「秋元康は現代の松永兄弟」

話題沸騰!『吉田豪の“最狂”全女伝説』吉田豪インタビュー「秋元康は、現代の松永兄弟か」

──そもそも、なぜ全女をテーマにしたインタビュー集を作ろうと思ったんですか?

吉田 「BUBKA」(白夜書房)のインタビュー連載をまとめた本としては、これまでに男性プロレスラー編、空手家編を出していて、「次は女子プロレスラーに絞りましょう」ってことになって。最初は女子プロレス全般でやろうとしていたから、全女以外にも風間ルミさんや尾崎魔弓さんとかジャパン女子プロレス系の人たちにも話を聞いて、それはそれで面白かったんだけど、やっぱり他団体は全女と比べると理不尽のレベルが違うんですよ。狂信的に何かを信じているような集団じゃないから、「これは全女に絞ったほうが面白くなるな」と思って。

──そうした全女の理不尽でデタラメなところを追っていくと、松永兄弟にぶつかるわけですね。

吉田 松永兄弟は“柔拳”っていう、プロレスの原点とも総合格闘技の原点ともいわれるジャンルに関わってた人たちで。万年東一っていう愚連隊の大物に「女子プロはお前らに任せた」って言われた真っ黒なバックボーンがあって、ヤクザとも平気でケンカする人たちなんですよ。腕っぷしも気も強くて、でも基本的には気のいいアッパーなおっちゃん。テキ屋みたいな感じで、いつも会場で焼きそばを作ってて、見たことのないメーカーのジュースを山ほど仕入れてきて全女の会場で売ったんだけど、そのジュースが賞味期限切れだったとか、90年代に入っても、そんなことばっかりやってた人たちなわけです(笑)。そういう人たちがテキ屋のノリでプロレス団体をやったら大成功して、そして崩壊していったという。

 

●秋元康がAKBで女子プロレスにリベンジ!?

 

──『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)の「24時間ラジオ」企画での吉田さん、宇多丸さん、コンバットRECさんのトークで、「現代の松永兄弟は秋元康なんじゃないか」って話が出ましたよね。

吉田 ネットでそんなことを書いてた人がいたんですよ。たしかに全女はフジテレビのスポーツ部じゃなくて芸能部の担当だったから、選手が歌わなきゃテレビ中継ができなかったんですけど、その素人っぽい歌であったり、男女交際を禁止された世界で女子同士を争わせてたり、見ている人たちが「ヤオでしょ」と思っていたら、けっこうガチが混ざってるところとかに共通点がある。どっちもガチが大好きなんですよね。

──全女では一部で結末を決めない形式の試合が行なわれていて、しかも関係者がそれで賭けをしていたという衝撃的なエピソードが『“最狂”全女伝説』に出てきますね。秋元氏といえば、女子プロをテーマにしたAKB48グループ出演のドラマ『豆腐プロレス』(テレビ朝日系)がありました。秋元氏の試みをどう見てますか?

吉田 秋元康の数少ない失敗のひとつが、女子プロレスで。ジャパン女子プロレスの立ち上げに関わったけど失敗して、それを引きずってるからリベンジしたがってる説は、前からあったんですよね。

──秋元氏は、キューティー鈴木の名づけ親でもあるんですよね。

吉田 正確にはアップル鈴木と命名したら、「それはない」って文句が出てキューティーになって。この前、神取忍さんから聞いて爆笑したんですけど、神取さんも最初は「ゴッド神取」って名付けられかけたという(笑)。ホントに雑なんですよ。本名が梅田麻里子のプラム麻里子もそうだけど、名前から単純に一文字拾ってるだけで、とにかく安直で(笑)。で、当時秋元康は、全女よりも小さくてかわいいアイドル的な選手を集めたジャパン女子が大失敗して、まあ悔しかったと思うんですよね。

──それで、『豆腐プロレス』でリベンジを狙った。

吉田 ドラマは仕事の絡みもあるから見てたけど、正直、ピンとこなかったんですよね。主題歌のタイトルが『シュートサイン』って時点で深いところまで描くつもりはあったと思うんですけど(「シュート」はガチンコを指す隠語であり、「シュートサイン」はガチでいくぞという合図)、テレ朝で放送して、新日本プロレスとの協力体制があるとなると、そういう部分には触れられなくて、プロレスを真剣勝負のジャンルとして描かざるを得なくなる。つまり『シュートサイン』が存在しない世界の話になってたから、主題歌の意味がわからなくなっちゃったんですよ。

──8月には後楽園ホールで、実際に『豆腐プロレス』のプロレス興行も開催されましたよね。

吉田 思ったより、ちゃんとしてましたね。「さすがに危ないんじゃないか」とか言われてたけど、首から落とすような危険な技は一切出さなかったし、それでいてちゃんとプロレスとして成立させていて、批判されそうなことは回避していた。全女の時代ならともかく、アイドルが普通に試合をするようになった今の女子プロだったらそんなに遜色はなかったと思います。ロープワークは下手でしたけどね。

──48グループだと構成作家などのスタッフに一流の人が入って、大会としてもうまくいきそうな気がします。

吉田 ただ、当日に舞台裏の実況の配信があったんだけど、解説に入っていた48の子とかが「えっ、今のこれ、ガチなんですか?」みたいに「ガチ」って言葉を多用していて、プロレスの会場でそれを言うのはどうかと思いました(笑)。

──他の団体の大会とかだったら、面倒なことになりそうですね。

吉田 プロレスファンはそのあたりすごいデリケートだから、言葉の使い方は気をつけないと。たぶん、そういうことを誰も注意してないんでしょうね。最近は「ガチ」という言葉が一般的になってきてるのはわかるけど、もともとは相撲やプロレスの隠語ですから。須田亜香里さんは「リアルプロレス」みたいな言い方をしていて、それだったら「今までドラマだったプロレスをリアルでやる」ってことで正しい言い方だなと思うんですけど。

日刊サイゾー担当編集 (『“最狂”全女伝説』のカバーのビジュアルを指して)これは紙テープがリングに舞ってるんですか?

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