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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 中村ゆりかの狂気が胸を刺すドラマ
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」番外編

完全覚醒前夜! 中村ゆりかの“秘めたる狂気”が心をえぐる深夜ドラマ『ぼくは麻理のなか』

 中村ゆりかは現在20歳。日本人と台湾人のハーフで、アイドルでは、ももいろクローバーZや私立恵比寿中学、若手女優では小松菜々や森川葵が在籍しているスターダストプロモーションの女優だ。

 スターダストの女優やアイドルは、細身の身体で年齢よりも幼く見えて少女性の強い子が多い。

 中村ゆりかも同様で、映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』(14)でも制服姿の美少女を演じていて、フェアリーテイルな存在感を見せていた。

 テレビドラマでは、『富士ファミリー』や連続テレビ小説『まれ』(ともにNHK)等に出演。主人公の思春期の姿や、物語の鍵を握るミステリアスな美少女としてビジュアルアイコン的に出演することが多かった。今回の『ぼくは麻理のなか』は、連続ドラマのレギュラーということもあって、今までは未知数だった演技力も見事に証明したといえる。おそらく、これから一気に主演級の役が増えていくのだろう。

 ビジュアルの魅力も去ることながら、グイグイと相手を追い込んでいくような畳み掛ける話し方を見せていて、今までとは違う個性を見せ始めている。

 今までも華奢な美少女という外見ながらも、『舞え!KAGURA姫』(NHK )での女子高生役のように、思い込んだらグイグイと自分の意見をぶつけてくる押しの強さを見せていた。今回の依は、麻理に対して狂信的な感情を抱いていることもあってか、切迫した感情が狂気のように押し寄せてくる。

 狂気を秘めた美少女役というと、同じ事務所の小松菜奈が映画界を席巻している。しかし、小松がカリスマ性のある女教祖のような絶対的な存在として上から来るのに対して、中村ゆりかの狂気は下から謙ってくる信者タイプの卑屈なヤバさなので、まったく違うアプローチが期待できる。

 ちなみに、原作漫画の依はショートカットにメガネで、必ずしも中村と外見が似ているわけではないのだが、違和感なく依になりきっている。

 ドラマのエンドロールでは、ドラマで展開したシーンと同じ箇所の漫画が流れるのだが、実写映像と見比べると、より面白いはずだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2017/11/01 19:52
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