必死に立ち回る神木隆之介を愛でたい! イジリ倒したい!『刑事ゆがみ』の楽しみ方
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■「容疑者はウソをつく」を引き受けている脚本
もうひとつ、このドラマがよく頑張っているなぁと思うところがあります。
刑事ドラマにおいて、容疑者がウソをつくことは珍しいことではありません。むしろ、罪状を否認してくれなければ話が進まないともいえるので、おおむね、どんなドラマのどんな容疑者もウソをついています。
容疑者がウソをつく生き物である限り、視聴者はその言葉のすべてを疑ってかかることになります。だからドラマは、彼らが「ウソをついていない」ときには「ウソをついていませんよ」と明確に主張する必要が出てきます。
例えば取り調べにおいて、刑事が母親のエピソードを聞かせる。容疑者は涙ながらに罪を自白する。よくあるパターンです。
このドラマでも、羽生くんが頑張って取り調べをするシーンが頻繁に出てきます。あえて古典的に、『太陽にほえろ!』みたいに、机を叩いたり恫喝したりする羽生くんが演出されますが、決して自白を引き出すことができません。なぜなら羽生くんの取り調べは、常に的外れで、真相ではないからです。
『刑事ゆがみ』は、こうしたシーンで容疑者に必要以上に否認させません。容疑者はウソをつく生き物であり、その言葉は常に視聴者に疑われるということを引き受けているのです。
では、どうしているか。言葉ではなく、行動によって「明確な否認」を描いています。行動はウソをつかないからです。
例えば第2話。斎藤工演じる下着泥棒は、泥棒に入った家で、寝ていた女性に暴行を働いたという容疑がかけられていました。
「俺は下着にしか興味がないからレイプはしない」
結果的に、真相はそういうことなのですが、これを言葉で言われても説得力は皆無です。しかし、彼が「女性が在宅中で、寝ているときにしか盗みに入らなかった」という過去の行動が示されることで、「今回も寝ている女性をレイプしなかった」という主張が補強されることになるのです。
今回も、取り調べのシーンがありました。容疑者は、恩義のある警官を殴り倒した罪に問われています。粗暴で短気な容疑者の自宅の冷蔵庫には、「辛い時こそ拳をひらけ」と書かれた紙が丁重に貼られていました。それは、警官がかつて、容疑者のために書いたものでした。
取り調べで容疑者は「向こうが先に襲ってきた」と正当防衛を主張しますが、やはり言葉だけでは説得力がありません。しかし、この取り調べの際に彼が、固く握った拳を震えながら開くシーンを繰り返し描くことで、「彼から襲ったのではない(彼は警官の教えを守っている)」という真相が、説得力を持って浮かび上がるのです。
こうした、プロットからシナリオを立ち上げる際の具体的なエピソードの作り込みが、実に丁寧に行われているのも、『刑事ゆがみ』の特徴だと思います。複数の脚本家を使っていますが、かなり強いディレクションというか、統率が入っているという印象です。クオリティコントロールが行き届いているし、時間をかけて脚本を練っていることがよくわかります。要するに、マジメに頑張って作っているドラマだということです。マジメに頑張って作っているドラマに対しては、やっぱりマジメに頑張って応援したいと思うのです。
今後も、羽生の心を揺らす事件を起こして、弓神が真相を解明する。その捜査の過程において、弓神が羽生に気付きを与え、羽生が成長していく。そういうパターンを守りながら回を重ねて行けば、大きく崩れることはないと思います。
■ところで、低視聴率について
それにしても、先日「面白いのに数字低いねー」と隣のデスクの人と話していたのですが、「もしかして、『浅野忠信って誰?』って状態なんじゃないの?」と言われて、目からウロコでした。確かに、センセーショナルだった『鮫肌男と桃尻女』から、もう20年近く。当時のサブカルキッズもおじさんおばさんですし、言葉は悪いけど、最近の浅野さんが「ドラマに降りてきた」みたいな感覚で楽しんで見てる人って、あんまりいないのかもしれません。
まあ、浅野さん本人は楽しそうですし、私も楽しいので、別にいいですけど。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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