トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 殺人ピエロがモデルの大ヒット作!
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.451

犯罪史に残る殺人ピエロがモデルの大ヒット作! トラウマが具象化して襲い掛かる『IT/イット』

『IT/イット』は単なるホラーではなく、 思春期を迎えた少年少女たちの成長ドラマとなっているところがス ティーヴン・キングならでは。 ペニーワイズの幻影に悩まされているビルたち7人は学校ではルー ザークラブ(負け犬クラブ)と呼ばれているが、 7人で夏休みを過ごしていくうちに無二の親友となっていく。 吃音症で悩んでいたビルも、 仲間と一緒だとあまり気にしないで済む。 パンツ一丁になって川へ飛び込み、 血まみれ状態のままだったベヴァリー家のバスルームをみんなで清 掃する。不良チームを率いるヘンリー(ニコラス・ハミルトン) にも7人で立ち向かった。 クラブの紅一点であるベヴァリーをめぐるロマンスも生まれる。 仲間と出逢い、初恋を経験し、 夏休みの間にビルたちはぐんぐんと大きくなっていく。 7人一緒なら、怖いものはない。ルーザークラブの一行は、 ペニーワイズが27年ごとにこの街に現われては多くの子どもたち をさらっていることに気づき、 下水道に潜むペニーワイズとの対決を決意する。 ひと夏の美しい記憶とおぞましい恐怖体験との対比が鮮やかに描か れる。

 ペニーワイズのモデルとなった連続殺人鬼ジョン・ゲイシーだが、 もちろん彼にも少年時代はあった。 厳格で癇癪持ちの父親のもとで育ったジョン・ ゲイシーは父親の暴力や暴言に苦しみながら、 それでも父親に愛されたいと願っていた。 大人になったゲイシーは勤勉な実業家として成功を収め、 ボランティア活動にも励んだ。 父親から一人前の男として認められたいという想いからだった。 結局、ゲイシーは父親の愛情を得ることができず、 自分自身が街の子どもたちを苦しめるという倒錯した欲望に溺れて いくことになる。『IT/イット』 に登場する不良少年ヘンリーも父親に虐待されており、 家庭内で溜め込んだ負の感情をルーザークラブのメンバーを虐める ことで吐き出そうとする。 本作のヒロインである美少女ベヴァリーもまた、 父親の支配に悩まされ続けている。 彼女もビルやベンたちと出逢っていなかったら、 もしかしたらITの仲間になっていたかもしれない。 ITは姿を変え、我々が忘れた頃にふいに現われる。

 映画版『IT/イット』はビルたちルーザークラブの7人が“ 大人への通過儀礼” としてペニーワイズと直接対決するシーンがクライマックスとなっ ている。ジュブナイルものとして秀逸な出来映えだが、原作& テレビドラマ版では40代になったビルたちの前に再びペニーワイ ズが出現することになる。 生きることに不安を感じていた10代の頃と違い、 40代になると仕事のこと、家庭のこと、残された人生のこと…… と違った悩みを背負うようになる。 人生に疲れた身体にムチ打って、 またペニーワイズと戦うのは少年時代とは違ったしんどさがある。 ギレルモ・デル・トロ製作総指揮『MAMA』(13) でデビューしたアンディ・ ムスキエティ監督は本作が記録的大ヒットになったことから、 続編製作にヤル気まんまんとのこと。 完結編の公開は27年後ではないことを願おう。
(文=長野辰次)

 

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』
原作/スティーヴン・キング 脚本/チェイス・パーマー、キャリー・フクナガ、ゲイリー・ ドーベルマン 監督/アンディ・ムスキエティ
出演/ジェイデン・リーバハー、ビル・スカルスガルド、フィン・ ウォルフハード、ジャック・ディラン・グレイザー、ソフィア・ リリス、ジェレミー・レイ・テイラー、ワイアット・オレフ、 チョーズン・ジェイコブズ、ニコラス・ハミルトン、ジャクソン・ ロバート・スコット
配給/ワーナー・ブラザース映画 R15+ 11月3日(金)より丸の内ピカデリー、 新宿ピカデリーほか全国公開
C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
http://wwws.warnerbros.co.jp/itthemovie/

『パンドラ映画館』電子書籍発売中!
日刊サイゾーの人気連載『パンドラ映画館』が電子書籍になりました。
詳細はこちらから!

最終更新:2017/10/30 11:45
12
ページ上部へ戻る

配給映画