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日刊サイゾー トップ > エンタメ > テレビ  > 『ゴッドタン』が飛ばしまくり

森三中・黒沢をネタに壮大な前フリ! テッパン企画に甘んじない『ゴッドタン』の攻めの姿勢

■なぜか、黒沢の“良いところ”を挙げられる人が現れない

 話を24日放送分に戻そう。この日は黒沢と小池を仲直りさせることが、企画上の最大の目的。「お互いを理解することが友達になることの近道」と考えた番組側は、2人が事前に回答したアンケートにどんなことが書かれているのか当てるクイズを行う。

 この中で、「黒沢が『最近吐いている弱音』は?」というクエスチョンが小池に出題される。果たして、本人による回答は「こんなババアで力がない大喜利もネタも出来ない人間の人気なんてあるわけねーし、この仕事いつまでやってんだろー」であった。

 多くの視聴者にとって、黒沢の自己評価に対し異論があるはずだ。彼女のセンスと舞台度胸に関しては、多くのウォッチャーが“一級品”だと認めている。

 おぎやはぎと劇団ひとりも、黒沢のことを高く評価する。「大喜利ができない」と自虐する黒沢に対し、「芸人には得意、不得意がある。黒沢は歌ネタが面白い」と言葉をかけるひとり。「歌ネタに代表的なものはない」とまだ抗い続ける黒沢であったが、「毎回、(ネタを)変えるから。志が高いから」と理詰めでフォローするひとりの言葉に、とうとう半泣きになってしまう。

 仲直りするとしたら、こんな絶好の流れはない。「そんなに卑屈になる必要は絶対にない!」と涙ながらに黒沢を慰める小池であったが、「どんなところが(黒沢は)芸人として魅力的だと思う?」と問われるや、何も思い浮かばずに無言になってしまう。ついには、「それは自分で考えてよ!」と逆ギレする始末だ。

 また、黒沢と小池の“友達候補”として登場したタレント・エヴァンス未希に、ひとりが「(黒沢に)良いところ言ってあげて」と促すと、彼女も黒沢を見つめたまま無言に……。

 誰もが実力を認める黒沢であるが、具体的な長所を挙げるまでには至らない不思議な状況が続いてしまう。

 この不穏な空気のスタジオに現れたのは、昨今、話題を呼んでいる「いかちゃん」であった。コップと手拍子を駆使し、リズムに乗せて人を褒めるネタを得意とする若手女芸人だ。

 彼女は即座に「黒沢さん、人見知りだけどダンス上手♪」と、難なく黒沢のことを絶賛。この芸を見た黒沢のほんわかした表情は、あまりにも印象的だ。

■25分番組に詰め込まれた、恐ろしい情報量

 ここで、ふと気づく。黒沢に対し“良いところ”がまったく言えなかった小池とエヴァンスのくだりが、いかちゃん登場へのフリとして完全に機能しているではないか。

 おぎやはぎと劇団ひとりのリアクションも含め、一丸の演技力ゆえに、こちらはみじんも気づくことができなかった。

 正攻法で行くのなら、「お笑い風」を主軸に引っ張るだけで、この日は十分イケる。この日どころか、数週にわたり大丈夫なはずだ。しかし、フタを開ければ、1本分を丸々費やしてのロングコントのテイを成していたという。私は、完全に兜を脱いだ。

『ゴッドタン』は25分番組である。CMを外せば、正味20分にも達しない。その中で、この情報量。脱帽だ。

 定番企画を発明すれば、それはバラエティ番組にとって強力な武器となる。『ゴッドタン』でいえば、「キス我慢選手権」や「マジ歌選手権」がそれに当たるだろう。今回の「お笑い風」いじりも、定番になり得る金脈だ。

 しかし、金脈を手にしつつ、そこだけに定住しない『ゴッドタン』のドライな姿勢が恐ろしい。グラフィックデザイナーからなんの気負いもなく画家へ転身した横尾忠則の思い切りのよさを思い出した。
(文=寺西ジャジューカ)

最終更新:2019/03/14 12:59
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