ホロコースト犠牲者と加害者の孫同士が禁断の愛!? タブーを破る『ブルーム・オブ・イエスタディ』
#映画 #パンドラ映画館
ナチスをめぐる問題といえば、日本では人気アイドルグループの「欅坂46」が昨年行われたハロウィンライブのステージで着ていた衣装がナチス風だったことが問題視され、米国のユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」から抗議されたことが記憶に新しい。これは「欅坂46」をプロデュースする側の歴史認識のなさが招いたトラブルだが、一方のドイツでは同じ歴史の過ちを繰り返してはならないと、ナチスドイツがどのようにして生まれ、何をしたのかを学ぶ歴史授業に多くの時間が割かれていることが知られている。だが、その反動から、「歴史の授業には飽きた」「ホロコーストのことなら、もう充分知っている」という倦怠感も流れているそうだ。
ホロコーストを題材にした映画は数多く作られてきたが、クリス監督によれば、どんな展開が待っているのか先が読まれてしまうような作品は、テーマとしてすでに死んでしまっているとのこと。また、ナチ戦犯の子孫とホロコースト被害者の子孫とが交流を持つことは決して絵空事ではないとも語る。
「ホロコースト関係者たちの子孫は、被害者側も加害者側も先祖が戦争をどのように過ごしたのかに興味を持って、欧州各地にある資料館や史跡を訪ねて回ることが多いんです。行く先々で同じ顔に出逢うことで、言葉を掛けるようになり、ジョークを言い合うような関係になっているのを僕自身が見てきましたし、交際に発展するケースもあると聞いています。でも、若い世代たちが古い歴史には興味が持てなくなってきているのも事実。若い世代が関心を示す、新しい方法で歴史を伝える必要がある。そんな時代の転換期に直面しているように僕は感じるんです」
終戦からすでに70年以上の歳月が経つ。過去を変えることはできないが、現代を生きる当事者たちが新しい関係を築くことができれば、未来は大きく変わっていく。不幸な出来事があった土地にも、種を蒔き、水を与えれば、いつか花が咲くこともあるかもしれない。クリス監督の新しいアプローチと、トトとザジとの禁断の恋の行方に注目したい。
(文=長野辰次)
『ブルーム・オブ・イエスタディ』
監督・脚本・プロデューサー/クリス・クラウス
出演/ラース・アイディンガー、アデル・エネル、ヤン・ヨーゼフ・リーファース、ハンナー・ヘルツシュプルング
配給/キノフィルムズ・木下グループ R15+ 9月30日(土)より渋谷Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
(c) 2016 Dor Film-West Produktionsgesellschaft mbH / FOUR MINUTES Filmproduktion GmbH / Dor Filmproduktion GmbH
http://bloom-of-yesterday.com
『パンドラ映画館』電子書籍発売中!
日刊サイゾーの人気連載『パンドラ映画館』が電子書籍になりました。
詳細はこちらから!
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事