ホロコースト犠牲者と加害者の孫同士が禁断の愛!? タブーを破る『ブルーム・オブ・イエスタディ』
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ナチスによる戦争犯罪やホロコーストを題材にした映画は、これまでにもスティーヴン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』(93)やロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』(02)など、多くの実録作品が作られてきた。ナチスの非道さと過酷な状況を懸命にサバイバルするユダヤ系の人々の生き様を描いたものがほとんどだ。ところが、ドイツ人のクリス・クラウス監督が現代的視点から撮った『ブルーム・オブ・イエスタディ』は、ナチスの戦争犯罪とホロコーストを扱いながらも、これまでの戦争悲話とはまったく異なるアプローチを試みている。なんと、ナチ戦犯の孫息子とホロコースト被害者の孫娘が出逢い、禁断の恋に墜ちていくラブコメディなのだ。
ホロコーストものは悲劇にしかなりえず、ナチ関係者は徹底的に断罪されなくてはならない。そんな我々の思い込みを、本作は大きく覆してみせる。主人公はドイツのホロコースト研究所に勤める中年オヤジのトト(ラース・アイディンガー)。ナチス親衛隊(SS)だった祖父を告発した著書を発表したことで世間からは評価されていたが、家族には勘当された身だった。妻とのSEXライフにも問題を抱えている。情緒不安定なトトは2年間にわたって準備を進めてきたアウシュヴィッツ会議のリーダーから外されてしまい、代わりに選ばれた同僚のバルタザール(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)と職場で殴り合いの大喧嘩をやらかしてしまう。雑用係に回されたトトは、フランスからやってきた研修生のザジ(アデル・エネル)の面倒を看ることになる。
ザジは明るく、ユーモア好きな女性だが、ユダヤ人の祖母をホロコーストで失っていた。ナチ戦犯の祖父を持ち、すべての物事を悲観的に考えてしまう頭の固いトトとは真逆の存在だった。開催が危ぶまれるアウシュヴィッツ会議を成功させるため、トトはザジを連れてスポンサー回りへ。ちぐはぐな2人は常に口論が絶えないが、ネオナチにトトが襲われたことをきっかけに2人の心の距離はぐっと縮まる。ホロコースト問題を異なる立場から見つめてきた2人は、ナチスが大虐殺を行なったラトビアの首都リガを訪ねた際、宿泊先のホテルで男女の関係を結ぶことに──。
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