昼間たかしの100人にしかわからない本千冊 25冊目
住むならどっち!? 多摩と湾岸で迷ったバブル時代と80年代雑誌の“ユルさ”
2017/09/12 22:30
#雑誌 #出版 #昼間たかしの「100人にしかわからない本千冊」
さて、この記事でたびたび比較対象として提示されるのは、多摩市と江東区。湾岸といっても当時は、まだまだ開発途上にあった地区。
記事は、それぞれの市役所に話を聞いたりして、オススメポイントを提示していくのである。
でも、そうしたデータと共に記されるオススメポイントは、狙っているかのような無軌道ぶり。もんじゃ焼きの本場を「江東区の月島」なんて記していたりする。これが、ネタなのか本気なのか判然とし難いが(月島は中央区です、念のため)、後者だとすれば、今では人気スポットの月島が、いかに見向きもされない街であったかを如実に現しているように思えるのだ。
そんな感じなので、とにかく多摩も湾岸も、オススメされても、まったく住みたい気分にならない。
「湾岸はさ、海があるんだ。親子揃ってウィンド・サーフィンなんてかっこいいぞ」
「多摩の奥のほうでは熊が出るって話もあるし」
こうして、会話形式で綴られる記事は、いつしか青山に住みたいという妻の本音へとシフトしていく。
ここでわかるだろうか。この記事の本質は「多摩VS湾岸」ではないことを。
そう、少し捻くれた形で港区や千代田区といった内陸部に住むことのできない人々の、怨嗟の声を綴りたかったのだ。
家賃が高騰し、買いたいものが溢れても、給料の上昇スピードが遅かった時代。人々は、怨念を内に貯め込んで暮らしていたのだ。
(文=昼間たかし)
最終更新:2019/11/07 18:41
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