ポケモン映画20周年記念作『キミにきめた!』に隠された、初代脚本家・首藤剛志の“幻の最終回”
#オワリカラ #偏愛文化探訪記
これだけでも、今年のポケモン映画が「いつもとは違う」ことがテレキネシスのように伝わってくる。
そして最初に解禁されたキービジュアルは、サトシとピカチュウが夕景の空を見つめる姿だ。その先には、優雅に飛んでいく伝説ポケモン「ホウオウ」。これだけでピンとくる人もいるだろう。
アニメの世界でサトシとピカチュウの旅立った日、すなわち1997年の4月1日に放送された第1話のクライマックスで、サトシたちの前に姿を現したのがホウオウだった。この「ホウオウ」は、その当時まだ開発中だったゲーム「ポケットモンスター」シリーズの2作目『ポケットモンスター金・銀』に登場が告知されていた、言うなれば「まだ見ぬ」新ポケモンだった。
そのウワサの新ポケモンの登場にくぎづけになると同時に、当時ホウオウは「歴史に残るような天才の前にしか姿を現さない」という設定が語られていて、この前途多難そうなサトシとピカチュウのコンビにこれからどんな大冒険と栄光が待っているのか、僕らは胸を躍らせた。
サトシは言う。
「いつか一緒にあいつに会いに行こうぜ!」
そういうわけで、「ホウオウ」はポケモンアニメにとってちょっと特別なポケモンなのだ。そんなホウオウとの出会いをキービジュアルに添えたことからわかるように、今回のポケモン映画は20年前と同じ「サトシ旅立ちの日」が舞台。言うなれば、アニメ『ポケットモンスター』第1話のリメイクなのだ。
しかし、キャラクターにサトシの初期の旅の仲間たち(タケシ、カスミ)がいないことからわかるように、ある種のパラレルワールド、サトシとピカチュウの「もう一つの旅立ちの可能性」を描いている。
そしてその旅は、今の子どもたちはもちろん、サトシと一緒に旅をしたことがあるすべての世代に届く、感動的でちょっとビターなものになっている。
僕は、最初のポケモン赤緑からプレイした世代なので、20年前のポケモンアニメ第1シーズン(通称・無印)の第1話が放映された日、テレビの前で正座してワクワクしながら待っていた。あれ以来、20年間、ポケモンアニメはずっと側にあって、特に意識せずともふとした時にテレビを見たり、映画を見に行ったり、つかず離れずのいい関係性で一緒に歩んできたと思う。
そして、最新作『キミにきめた!』を見て、20年間好きでいられたポケモンアニメへの一つの大きな区切りがつけられた感じがしたのだ。
おそらくポケモンのアニメは、その人気が続く限り終わらない。サトシとピカチュウは、サザエさんやドラえもんのキャラクターのように永遠に年をとらないまま、終わらない旅を続けるだろう。
つまり、ポケモンアニメに真の意味での「最終回」はやってこないわけだが、今回の映画は一つの「最終回」の可能性を見せてくれる。少なくとも僕にとっては、あの日に見届けた旅立ちの、20年越しの終着点だった。「いつか一緒にあいつに会いに行こうぜ!」の「いつか」がやってきたのだ。
そんなわけで、サイゾー読者にもぜひ見てもらいたい今年のポケモン映画なのであった。
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