都市伝説のメリーさんを追い、煩悩だらけの禅僧 最期の夢に伴走した中村高寛監督が20年を振り返る
#映画 #インタビュー
■映像には被写体の念が篭る。だから撮り始めたら必ず形にする
──『赤い靴』の映画化に情念を燃やすミトワさんを中村監督はサポートすると同時に、ミトワさんとその家族を被写体としたドキュメタリーを撮り始める。
中村 『ヨコハマメリー』が話題になったことで、『ヨコハマメリー』を劇映画化しないかという話もいくつかありました。それもあって、ミトワさんのドキュメンタリーをつくり、話題になれば、『赤い靴』の映画化のオファーもくるかもしれないとミトワさんに話したんです。
──撮影が進んだ後半も、ミトワさんは監督に怒りの感情をぶつけるようになります。あれはミトワさんの体調が悪かったせいですか?
中村 体調の悪化がいちばんの原因だったと思います。撮影を始めてしばらくは好々爺然としていたんです。でも、入院する前後から、僕に怒りの感情をぶつけるようになりました。ミトワさんの考えているドキュメンタリーと、僕が撮っているドキュメンタリーが違うものだったことも要因だったと思います。ミトワさんはテレビや雑誌のインタビューはけっこう受けていたので、取材や撮影は1~2日で済むものと思っていたんです。ところが僕はその頃、すでに4~5カ月はカメラを回していました。ようやくミトワさんに馴染め始めたくらいの感覚だったんですが、ミトワさん的にはもういいだろうと。ずっと撮影されることに飽きてしまっていた。それで僕が「取材はもうやめます」と言い出すように、悪態をつくようになったのかもしれません。そこからはミトワさんと僕との闘いでしたね。
──被写体が普段隠している顔を見せている。監督としては望むところ?
中村 いや、もっと自然な感じで撮影したかった(苦笑)。
──途中で、もう止めようとは思わなかったんですか?
中村 ドキュメンタリーって撮影はしたけど、編集しないまま未完成で終わってしまう企画が多いんですよ。でも、僕は一度カメラを回し始めたら、映画としてきちんと形にしたい。写真には被写体の魂が篭るってよく言いますよね。映像にもそれがあると思うんです。その人の念だったり、想いというのが確実に映像の中には残ると僕は思っています。だから、撮ったものはちゃんと作品にしないと成仏しない。僕はそれもあって、撮り始めたものはきちんと完成させるようにしているんです。そうしないと自分の仕事としても完結しない。それまで僕は取材対象者と喧嘩したことはありませんでしたが、ドキュメンタリー映画には“こうでなければならない”という決まった方法論はないと思うので、そのことも含めてミトワさんと改めてしっかり向き合うことにしたんです。僕も本気で怒っていました。自分の怒った声って、こんなんだと分かったときは、恥ずかしかったですね。
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