過去の技術から劇的進化した最新モデルへの転換は必然……関西電力がトロリーバスの廃止を決定
あの貴重な路線がなくなってしまうのか!?
関西電力が、立山黒部アルペンルートの一部で運行しているトロリーバスを、2019年から電気バスに変更することを発表し、話題になっている。この路線は、1964年に開通した長野県大町市の扇沢駅から富山県立山町の黒部ダム駅までを結ぶトンネル路線。開通以来、黒部ダム観光の足として多くの乗客を運んできた。
だが、関西電力では車両更新後の電気料やメンテナンス料金を考慮し、蓄電池式の電気バスに切り替えることを決めた。
トロリーバスは、上に張られた架線から電気を得て走る、いわばバスの形をした路面電車である。法的な分類は「無軌条電車」すなわち鉄道としての扱いになっている。
かつては、日本でも東京や大阪、横浜や名古屋など大都市でトロリーバスが運行されている時代があった。だが、それは次第に姿を消し、現在はこの関電トンネルトロリーバスと、室堂駅~大観峰駅の立山トンネルトロリーバスが残るのみである。
東京の例を見ると、1952年に開業した都営トロリーバスは亀戸~池袋~新宿間などを運行するも、1968年には廃止されてしまった。
「トロリーバスは、線路が不要なため路面電車よりも低コストで運行できるメリットがありました。でも、都市部での運行にはデメリットも大きかったんです。架線から電気を得る必要があるため、決まったところしか走ることができません。それに輸送力は路面電車よりも少ないんです。そのため、次第に廃れていったという歴史があります」
そう話すのは『路面電車の謎 思わず乗ってみたくなる「名・珍路線」大全』(イースト新書Q)などの著書がある、フリーライターの小川裕夫さん。小川さんによれば、今回関西電力が切り替えを決めた電気バスは、次世代エネルギーを用いた公共交通として、水素バスと共に期待されているものだという。
「トロリーバスに比べて電気バスは、とにかく蓄電池の性能が向上しています。都内でも電気バスを導入している自治体も出てきていますよ」(同)
都内では墨田区や羽村市で導入されている電気バス。全国各地で、徐々に導入が進んでいる。今回、関西電力が導入する電気バスは、車載パンダグラフで超急速充電ができるもの。座席数はトロリーバスの36席から33席に減るが、定員は76人から80人に増える。
すでに過去の技術になったトロリーバスから、最新の電気バスへの転換は、もはや必然という流れなのか。立山トンネルトロリーバスは引き続き運行されるが、車両の更新は「今のところない」とのこと。廃止までの間に、ぜひ一度は乗っておきたい。
なお、もし訪問するならば、関西電力が毎年行っている「黒部ルート見学会」がオススメ。これに参加すると、普段は乗ることのできない関西電力専用軌道を体験できる。
(文=昼間たかし)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事