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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 麻薬大国フィリピンの捜査内情
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.438

腐敗警察24時!! 麻薬大国フィリピンの捜査内情を生々しく暴き出した『ローサは密告された』

 ローサが目を離していると、夫のネストールはすぐに商品のシャブに手を出してラリってしまう。子どもたちも遊びたい盛りで、店の仕事をあまり手伝わない。ローサがしっかりしているから、辛うじて成り立っている一家だった。その晩も夫婦で覚醒剤をパック詰めする作業を終え、これから家族みんなで晩ご飯を食べようとしていた矢先、警察官たちが逮捕状なしで店に雪崩れ込んできた。抜き打ちでのガサ入れだった。「何? 覚醒剤? 知らない!」とシラを切るローサたちだったが、タバコの箱の中に仕込んでいた覚醒剤の包みと顧客リストが見つかってしまう。夫婦そろって手錠を掛けられ、警察署へと連行されるはめに。到着した警察署では警官たちは私服姿でだらしなくたむろっており、ほとんどヤクザの事務所といった風情だ。ローサ夫婦を取り調べる警察のやり口がこれまたエグい。

「早く釈放されたければ、罪を認めろ。20万ペソ(日本円で44万円)で手を打ってやる」

 家に残してきた子どもたちのことが心配で、ローサは一刻も早く帰りたい。少量とはいえ、覚醒剤を扱っていたのは事実で、言い逃れすることは難しい。夫婦で持ち金すべてを警官に手渡すが、当然ながら20万ペソには及ばない。足りない分を埋めるため、ローサは捜査官に言われるがまま覚醒剤の売人の名前を告げる。ローサが電話で誘き出したことで、売人もあっという間に捕まった。売人が持っていた売上金が手に入り、警察署はいっきにパーティーモード。ローサ夫婦が保釈金のつもりで渡したお金も、すべてその場にいた警官たちで山分けしていた。署内は呑めや歌えやのドンチャン騒ぎだ。宴会を始めた警官の目を盗んで売人はケツ持ちを頼んでいる警察上層部にスマホで連絡を入れるが、それが見つかり売人は半殺しにされる。自分が売った売人が血だるまになって倒れた姿を見て、声を失うローサだった。そして、そんなローサに警官は告げる。

「誰かにしゃべったら、お前も殺すぞ!」

 メンドーサ監督は実際にあった事件をベースに本作を撮っているが、本作は2015年に撮影しており、16年に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領による“麻薬戦争”が始まる前の穏やかだった時期の様子を映し出したものだ。麻薬犯罪の撲滅を公約に掲げたドゥテルテ大統領から、超法規的捜査を認められた警察および自警団による犠牲者数は17年1月の時点で7,000人を越えている。麻薬捜査に抵抗しようとした者は問答無用で殺され、警察側にとって都合の悪いことをしゃべらないようにと口封じのために殺された人間も少なくないとされている。殺されるよりはマシと、自分から出頭する覚醒剤常用者たちが相次ぎ、フィリピンの刑務所はすし詰め状態だ。フィリピン警察の過激さは、本作で描かれている以上のものとなっている。

腐敗警察24時!! 麻薬大国フィリピンの捜査内情を生々しく暴き出した『ローサは密告された』の画像3子どもたちの力で両親を救い出せるのか。長女ラケルを演じたのは、ジャクリン・ホセの実の娘アンディ・アイゲンマン。

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