フィリピン映画『ローサは密告された』を伝説の映画作家・原一男が絶賛「日本は軟弱な映画ばかり!」
#映画
■今の映画技術+昔ながらの視線が合わさった=最先端の映画!
3台のカメラで撮っているそうですが、私が観てもわからないくらいに、自然に撮られていました。脚本も渡さない、まさしくドキュメンタリーの撮り方。その結果、貧困層の人たちの息遣いが、リアリティをもって描かれていますよね。デジタルカメラで撮られる意義も感じられます。デジタルカメラは肉眼で感じられるより明るく映るんです。だから本作も「ノーライト」(照明なし)で撮られています。場所が持っている光で表現できるのです。本作は今の映画技術と昔ながらの視線が合わさった映画。まさしく“最先端”の映画だと思います。
■昔の日本は、犯罪を“やってはいけないもの”と思っていない!?
大島渚監督は長年、犯罪者を主人公にした映画を撮られています。社会に収奪された貧乏人が生きていくうえで「どうして犯罪を犯しちゃいけないのか」という思いがあるんです。そんな映画を観て育ってきた70年代の私たちは、やっちゃいけないことだと思っていません。その結果が、奥崎さんですよね。彼は犯罪を勲章だと思っています。『ローサは密告された』のラストの名シーンは、ローサの「こういう社会でも生きていく」っていう決意が感じられて、私も共鳴しました。倫理や世の中の教えなんて眉唾ですよね。本当に修正すべきところはどこなのか? と考え直さなきゃいけませんよね。
* * *
最後に自身の新作の話になると「長年、『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三さんみたいな政府にケンカを売るような人を探していましたが、どこを探しても見つかりませんでした。今の時代の人々は非常にヌルく生きている! と思いました。最新作には、そんな欲求不満が映像に現れているかと」と原監督らしい喝が!
「でも今、奥崎さんみたいな人が現代にいたら、ネットで炎上して、潰されてしまうのだろうな……」と生きづらい今の世の中を嘆く場面もあった。
『ローサは密告された』
監督:ブリランテ・メンドーサ
出演:ジャクリン・ホセ、フリオ・ディアス
配給:ビターズ・エンド
http://www.bitters.co.jp/rosa
(c)Sari-Sari Store 2016
シアター・イメージフォーラムほか大ヒット上映中!
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