フィリピン映画『ローサは密告された』を伝説の映画作家・原一男が絶賛「日本は軟弱な映画ばかり!」
#映画
■映画作りには必須!? ワイロを使った過去の体験を告白!
映画の中で警察が当たり前のようにワイロを要求していましたが、私も、1回だけ撮影でワイロを使ったことがあるんです。『ゆきゆきて、神軍』で奥崎謙三さんに付いてパプアニューギニアで撮影することになったんですが、カメラを持ち込むことができないと事前に言われていました。でもワイロを渡したらいいんだよ、って教えてもらって。案の定、税関で止められて。「これで……」とお金を渡したら、簡単に通してくれました。
本当にワイロは当たり前のことなんです。警察たちは、決して私達に憎しみがあるわけじゃありません。給料だけでは生きていけない、だから小銭稼ぎする。そんなシステムが成り立ってしまっているだけなんです。
■クソみたいな社会を生き抜いてやる! ラストシーンに涙した!
今村昌平監督は「映画は人間を描くもの」といいました。私は、一言加えて「映画は人間の感情を描くもの」と理解しています。人間は社会に組み込まれて生きていきます。その社会の中には、必ず縛りや矛盾がある。その仕組みを強いられるのは貧困層の人たちです。
この映画では主人公の感情を通して「政治体制の矛盾、闇、社会のもつ歪み」を描き出しています。「クソみたいな社会を生き抜いてやる」という決意を感じられたラストシーンには、思わず共感して、もらい泣きをしてしまいました。
どれだけ大変なことがあっても腹は減る。昔、女性が“食べる”というシーンで絶賛されたものがありました。今村昌平監督の『赤い殺意』(64年)という作品です。ヒロインの春川ますみが強姦されて、死のうとするけど、失敗して……。でも、彼女、そこからご飯を食べるんですよ。食欲というのは人間のエネルギーの根源です。
この作品は、マーティン・スコセッシ監督が絶賛し「今村監督と対談をしたい!」と申し出た作品でもありました。それを思い出すほどに、素晴らしかった。
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