安価で高品質のハンバーガー屋が“怪物”に変貌!? マクドナルド創業秘話を映画化『ファウンダー』
#映画 #パンドラ映画館
人のよさそうなマクドナルド兄弟(ジョン・キャロル・リンチ、ニック・オファーマン)に案内されて店内を見学すると、そこには画期的なアイディアが溢れていた。パテの焼き時間やソースの量をきっちり決めたレシピどおりにメニューは作られ、スタッフは分業化して機敏に動く。注文を聞いて、ハンバーガーができるまでわずか30秒。商品の単価を下げるため、ウェイトレスも食器も置かず、テイクアウトのみ。メニューはハンバーガーとチーズバーガー、それにポテトとドリンクだけというシンプルさ。いっさいの無駄を省いていた。試行錯誤してこのドライブインを完成させたマクドナルド兄弟は、美味しいハンバーガーを客を待たせることなく低価格で提供できることが自慢だった。感激したレイは「フライチャンズ化して、もっと広めよう」と熱心に口説く。この店こそ、自分の人生を賭けるに値する最高のビジネスチャンスだとレイは感じていた。かくしてフライチャンズ展開を任されたレイはマクドナルド兄弟と契約書を交わし、理想の店づくりへと邁進する。
キリスト教の教会のように全米中にマクドナルド店を普及させようと努めるレイだが、すぐには軌道に乗らない。当時は同じチェーン店でも、地域や店が違えばメニューも味も異なるのが当たり前だった。また、お店が増えれば増えただけ、資金繰りにレイは頭を悩ませるようになる。そんなレイに、メフィストフェレスのごとき一人の男性が声を掛ける。後にマクドナルド社の最高財務責任者になるハリー・ソナボーン(B・J・ノヴァク)だ。レイはフライチャンズ店にハンバーガー作りと営業のノウハウを教え、その見返りとして収益の1.9%をもらっていた。だが、ハリーはその考え方を根本的に改めるべきと告げる。レイはまず不動産を手に入れ、そこにフライチャンズ店を建て、そのテナント料を得るようにすればいいと。そうすれば、収益の1.9%よりも遥かに多く、安定した収入をキープできる。「あなたはハンバーガービジネスをやるんじゃない。不動産ビジネスをやるんです」とメフィスト、いやハリーはささやく。
それまでは面白いビジネスに挑戦することに生き甲斐を感じていたレイだったが、ハリーの法的には何ら問題のないアドバイスに従ったことで、レイの懐に入ってくる収益は桁違いのものとなっていく。「外食産業の革命児」と世間にもてはやされるようになったレイは、以前の夢見がちなセールスマンとはもはや別人だった。長年苦労を共にし、資金集めに協力してきた妻エセル(ローラ・ダーン)はもう用済みとばかりに別れを告げ、若くて美人なピアノ奏者のジョアン(リンダ・カーデリーニ)と親交を深めていく。後にマクドナルド社のCEOとなるフレッド・ターナーら、レイに忠誠を誓う若いスタッフも育つ。銀行も進んで融資するようになったレイにとって、メニューの変更を頑なに認めようとしないマクドナルド兄弟は邪魔者でしかなかった。契約書を盾にレイの独断専行ぶりにクギを刺そうとするマクドナルド兄弟だったが、「契約は破るためにある」とうそぶくレイの敵ではなかった。マネーモンスターと化したレイはマクドナルド兄弟の頬を札束で叩くようにして、マクドナルドという屋号を含めた全ての権利を自分のものにしてしまう。
52歳からアメリカンドリームを実現した男のサクセスストーリーを赤裸々に描いた『ファウンダー』だが、劇中のレイはとても正直に自分の夢を現実のものに変える秘訣を我々に教えてくれる。
「ビジネスは戦争だ。きれいごとでやっていけるか!」
駅前にあるマクドナルドに入ると、いつでも同じ美味しさのハンバーガーが0円のスマイルと共に提供される。この美味しさの隠し味は、メフィストフェレス由来のものかもしれない。本作を観た後に食べるハンバーガーは、何とも言えない禁断の後味がする。
(文=長野辰次)
『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』
監督/ジョン・リー・ハンコック 脚本/ロバート・シーゲル
出演/マイケル・キートン、ニック・オファーマン、ジョン・キャロル・リンチ、ローラ・ダーン、パトリック・ウィルソン、B・J・ノヴァク、リンダ・カーデリーニ
配給/KADOKAWA 7月29日(土)より角川シネマ有楽町、角川シネマ新宿、渋谷シネパレスほか全国ロードショー
(C)2016 Speedee Distribution, LLC. All Rights RESERVED
http://thefounder.jp/
『パンドラ映画館』電子書籍発売中!
日刊サイゾーの人気連載『パンドラ映画館』が電子書籍になりました。
詳細はこちらから!
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事