日本で一番歌がウマい歌手は誰なのか? プロボイストレーナーに聞く!【前編】
#インタビュー
「ヘタにはパターンがある」。私の中でこんな実感がある。何事も「ウマい」と言われるものには、教科書的なウマさもあるが、規制のルールや概念を根こそぎぶっこわすような、はじけた、飛び抜けたウマさもある。ウマければ、何をしたっていいのだ。
一方で「ヘタくそ」にはパターンがあると思えてならない。100人ヘタがいたら、そのヘタはいくつかのパターンに分類できる。そして、ウマい人を見習う以外に、ヘタな人が踏みがちなパターンを避けるということも、上達の助けになるのではないだろうか――?
物事のウマい、ヘタを研究する「ヘタの研究」、今回は「歌がウマい、ヘタとはどういうことか」を、ボイストレーナー、ソプラノ歌手であり『LIVEDAM精密採点DX徹底攻略!!ボイストレーナーとカラオケチャンピオンが教える カラオケ上達最強テクニック これであなたも10点UP!!』(コスミック出版)著者、菅原久美子氏に伺った。いったい、日本で一番「歌ウマ」な歌手は誰なのか――? 歌がヘタな人がやりがちなことも触れているので、音痴な人も、自分が音痴だと気づいていない隠れ音痴の人も必見だ。
■楽譜に忠実であること~余計な「俺アレンジ」を入れない~
――プロの菅原さんから見て「歌がウマい」と思う歌手は誰でしょうか?
菅原久美子氏(以下菅原) まず男性ですが、技術が長けてかつ音楽性があるのは久保田利伸さんだと思います。生番組で見た時の発声が安定していて、クラシック歌手に似ています。地声で歌っているではなく、クラシック歌手が歌うように突き詰めた発声で歌っていますね。
昔のヒット曲を同じ歌手が十年以上たったあとで歌うことがありますが、私たちがかつて聴いていたものよりも崩して歌う傾向があるんですね。久保田さんはそのようなことがなく、常にキーに忠実に歌っています。聴いた人に、当時の思い出ごと蘇るような歌い方です。
――「楽譜に忠実であること」が求められるんですね。
菅原 はい。「歌う人の気持ち」もありますが、作った作詞者や作曲者の世界観が込められている譜面に忠実に歌った方が、私は世界観を表現できるし、楽譜を踏まえることが大切だと考えています。
――こちらは、一部の歌がヘタな人が大きく間違えていそうなポイントでもありますね。基礎がまったくできていないのにオリジナリティとか個性とかを入れて恥ずかしいことになっている人は、久保田利伸さんの姿勢から学ばないといけないことは多そうです。女性歌手ではいかがでしょう?
菅原 ちあきなおみさんと、石川さゆりさんですね。亡くなられましたが美空ひばりさんも、ウマいです。
――今名前があがった方はすべて、「CDで聞くとウマいけど、歌番組だと聴いてるほうが恥ずかしくなってしまいチャンネルを変えてしまうほどヘタ」というのは絶対にないと確信できる抜群の安定感や地力がありますね。
菅原 このクラスでウマい方は、J-POPですと、なかなかいらっしゃらないですね。あと、坂本冬美さんがJ-POPのカバーをいくつか歌われていますが、こちらも大変お上手です。演歌の方たちのボイストレーニングは、とてもハイレベルだと思います。
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