日本映画のポスターがダサいのは原因があった!? 『獣道』プロデューサー、アダム・トレルが大放談
#映画 #インタビュー
■日本人も知らない日本文化を伝えたい
内田監督との2度目のタッグ作『獣道』は、愛とパッションに加え、映画的な面白さが溢れた作品だ。地方都市を舞台に、カルト教団で育った少女・愛依(伊藤沙莉)が自分の居場所を求めて、ヤンキーコミュニティーに溶け込こんでいく姿が描かれる。カルト教団や崩壊した家庭といった要素は、園監督の大ブレイク作『愛のむきだし』(08)を彷彿させる。また、英国人プロデューサーのアダム氏がヤンキーカルチャーを題材にした映画を製作するというのもユニークだ。
アダム「園監督の『愛のむきだし』を海外で配給したところ、大変な人気になった。それまでの園監督は『自殺サークル』(02)などエクストリーム系の監督のひとりくらいにしか欧州では認識されていなかったけど、『愛のむきだし』が大ヒットし、『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』(11)も当たった。内田監督から『獣道』の内容を最初に聞いたとき、俺も『愛のむきだし』と似ているなと感じた。海外ではカルト宗教は人気の題材なので、すごくいいと思った。『獣道』の英題は『Love and Other Cults』。ヤンキー文化に関しては、俺は素養があった。『ビー・バップ・ハイスクール』(85)や『スケバン刑事』(フジテレビ系)を子どもの頃に観ていたしね。海外の不良はギャングっぽくて怖いけど、日本のヤンキーはどこか可愛げがある。それにヤンキー文化は英国のモッズカルチャーと通じるところがある。どちらも労働者階級の文化で、彼らは月曜から金曜まで一生懸命働いて、週末は稼いだお金でバイクを改造したりファッションに使って、みんなでツーリングする。モッズは黒人音楽が好きで、ヤンキーは永ちゃんが好き。音楽が重要なのも一緒(笑)。すごく通じるところがある。俺、70~80年代の日本のアイドルグループも大好きで、ピンクレディやキャンディーズのグッズをコレクションしていた。メジャーなアイドルだけじゃなくて、キャンディーズの妹分だったトライアングル、フィーバー、キャンキャンまで集めてた。日本人も知らない日本の文化をみんなに伝えたい。自分でもおかしいと思うよ。ヤバいよね(笑)」
上映時間237分だった『愛のむきだし』に対し、『獣道』は94分で家族や社会に翻弄されながら生きていくヒロイン・愛依の過酷な青春が濃密に描かれていく。愛依を演じた伊藤沙莉はテレビドラマで活躍した人気子役出身だが、『獣道』では金髪に染めてのヤンキーファッション、清純そうな中流家庭風ファッションなど自分を受けいれてくれる環境に応じて次々と擬態していく。自分の居場所を失いたくないために上半身裸になるシーンもあり、まさに体当たりの熱演で『獣道』を完走してみせた。
アダム「伊藤沙莉は本当にヤバいよ(笑)。彼女は女優としてもちろん人気もあるけど、大事なのは人気よりも演技ができるということ。彼女が脱ぐシーンは、脱ぐことで自分の心を見せる重要な場面だった。逆にSEXシーンでは脱いでない。彼女はちゃんとそのことを理解してくれて演じてくれた。彼女の所属事務所は、タレントではなく俳優をマネージメントしている、映画に対して理解のある会社でよかった。これが製作委員会方式だったら、『もっと有名なアイドルを使え』とか言ってきて、その結果このシーンもなくなっていたかもしれない。もしくはセールスのためにヌードシーンを増やすよう言われたかもしれない。内田監督は女優の演出がうまいし、キャスティングのセンスもいい。今回もすごくいいキャストが集まった。ヤンキー役の吉村界人もいいし、演技は初めてのアントニーも悪くない。子役時代も含めて長いキャリアのある須賀健太は安定していて、もう何も言うことがない(笑)。最初の編集段階での『獣道』はすごく長かったけど、俺は編集に関しては厳しい。最近の日本映画はダラダラしたのが多すぎる。映画は映像と音も大事だけど、テンポをよくしないと海外では観てもらえない。最初から最後まで監督と一緒になって映画をよくするための努力を惜しまない、それがプロデューサー」
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