人生落ちこぼれ組が結束する『パワーレンジャー』大ヒット作の裏側にいた仮面プロデューサーの存在
#映画 #パンドラ映画館
八手三郎名義の作品も含め、膨大な数のドラマを手掛けた平山亨氏。社員プロデューサーという立場を貫いたため、東映からの給料以外は手にすることはなかったそうだ。映画黄金期から斜陽期を迎えつつあった東映京都撮影所でキャリアをスタートさせ、黎明期にあった特撮ドラマのジャンルで大活躍した平山氏は仕事仲間たちと一緒に面白い作品をつくることに夢中で、社内での出世やお金儲けにはまるで興味を示さなかったと言われている。2013年7月に亡くなった平山氏の人柄について、平山氏と親交の深かったフリーのプロデューサーに話を聞いた。
「天性のお人よしと言われるほど、平山さんはとても人当たりがよかった。ファンを大切にし、いつも多くの企画を抱え、あっちこっちの現場を行き来していた人。東映本社の社員は平山さんを捕まえるのに苦労したそうです。平山さんのプロデュースする作品はどれも子ども目線で、茶目っ気があり、本人も永遠の子どものような心の持ち主でした。多くの作品を残していますが、平山さん自身が特に思い入れの強かったのは、初期のヒット作『仮面の忍者 赤影』(67~68年/関西テレビ)やホームドラマと特撮の世界を融合させたコメディ『がんばれ!!ロボコン』(74~77年/テレビ朝日)あたりだったんじゃないでしょうか」
なるほど。派手な仮面を被った忍者・赤影が仲間の白影や青影とのチームワークで巨大な敵と戦う特撮時代劇『赤影』は、現在も続くスーパー戦隊シリーズの原型だといえそうだ。また、平山氏の自伝『泣き虫プロデューサーの遺言状 TVヒーローと歩んだ50年』(講談社)には幼少期は体が弱かったため小学校への入学が1年遅れたこと、映画監督としてはヒット作を残すことができずにテレビ番組のプロデューサーに転身したことが回顧されている。『がんばれ!!ロボコン』の取り柄のないダメロボットのロボコンががむしゃらに張り切る姿に、どこか自分の心情を投影していたのかもしれない。
学校に自分の居場所を見つけることができない、肌の色や家庭環境の異なる5人の少年少女たちが特訓を重ねて、ヒーローへと目覚めていく『パワーレンジャー』は複雑な現在社会を生きる世界各国の子どもたちを夢中にさせている。大ヒットシリーズの裏側には、八手三郎という名の仮面のプロデューサーが存在した。
(文=長野辰次)
『パワーレンジャー』
プロデューサー/ハイム・サバン 監督/ディーン・イズラライト
出演/デイカー・モンゴメリー、RJ・サイラー、ナオミ・スコット、ベッキー・G、ルディ・リン、ビル・ヘイダー、ブライアン・クランストン、エリザベス・バンクス
日本語吹替え版/勝地涼、広瀬アリス、古田新太、山里亮太、杉田智和、水樹奈々、鈴木達央、沢城みゆき
配給/東映 7月15日(土)より全国公開
(c)2017 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.
http://www.power-rangers.jp
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