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年間被害総額は400億円! バッタ博士の狂気の奮闘記『バッタを倒しにアフリカへ』

 こうして、前野の2年間は終わった……。

 研究期間を終え、無収入状態に陥った前野。しかし、バッタに対する尽きせぬ想いを捨てられない彼は、無収入であっても、その研究を進めていくことを決めた。日本に一時帰国し、バッタ研究の意義を広く知らしめ、バッタ問題の認知度を上げるため、率先して雑誌連載やトークショー、そしてニコニコ超会議などの場での広報活動にいそしんだ。そして、再び彼はいちるの望みをかけて、アフリカの地へと舞い戻ったのだ。

 前野にとって3年目のアフリカは、例年にない大雨に見舞われ、各地でバッタの大群が猛威を振るっていた。バッタ発生の一報をつかみ、現場に飛び込んだ前野が見たのは、これまでに遭遇したものとはケタ違いの、空が真っ黒く覆われるほどの大群。念願の再会に、前野は観察ノートにペンを走らせながら、狂ったようにデータを収集していく。数日間にわたってバッタを追いながら、前野の手にはさまざまなデータが蓄積されていったのだ。その詳細な観察は、群れの動く法則すらも見えてくるほどだったという。前野の情熱は、この瞬間にようやく実を結んだ。

 バッタへの情熱、自然の前になすすべもない悔しさ、不足する研究費、量産されるポスドクによって就職難にあえぐ苦しみ、そして、そんな苦悩をついに打ち破る瞬間……。かつて、これほどまでドラマティックなバッタ研究についての本があっただろうか? 残念ながらバッタに食べられるという夢こそかなわなかったものの、前野は無事日本での研究者としての椅子を手に入れることにも成功した。バッタ博士は、今日もバッタを観察しながらニヤニヤとした笑みを浮かべていることだろう。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

最終更新:2017/07/06 21:00
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