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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > 『進撃の巨人』に見る作者の愛国心
中国“ヤバい”漫画家・孫向文の「日本アニメ文化論」

『進撃の巨人』に見る、諌山創氏の愛国心と中国の“におい”

■作中で暗示される日本と中国の現状

 本作からは日本のみならず、中国の“におい”も感じ取ることができます。

 巨人から人類を守る壁は三層存在するのですが、最も外側にある地域は「シガンシナ区」と名付けられています。「シナ」、すなわち「支那」は現代では差別語とされる中国を表す言葉であり、それが最も外にあるという点においても、中国と日本の位置関係を表しているかのようです。

 また、人類を統治する政府は、「巨人から人類を守る」という大義を振りかざして腐敗政治を行っているのですが、これは外国を仮装敵国として独裁政治を行う中国政府を連想させます。作中では「壁の外の世界は美しい」と記された書籍が禁書扱いされ、所持したり人に広めようとする人物は捕らえられてしまうのですが、これは中国政府による思想弾圧のようです。

 そして、人類を取り囲み襲撃する巨人たちは、日本を取り囲む中国、アメリカ、ロシア、といった大国をイメージしているのかもしれません。日本はこれらの国々と比べると国土、軍事力ともにあまりに脆弱です。しかし、日清戦争や日露戦争時、当時の日本人は努力の末、自国より国土や人口がはるかに勝る相手に打ち勝ちました。日本人は巨大な敵にも果敢に立ち向かう勇気と力を持っており、本作においても、こうしたかつての戦前の日本を重ねているところもあるのかもしれません。

 以上のことから『進撃の巨人』が人気作品となった要因は、現在の社会事情が作品の至るところに反映され、その要素が作品の世界観に迫真性をもたらしたからだと、僕は推測しています。 

『進撃の巨人』に見る、諌山創氏の愛国心と中国のにおいの画像2

●そん・こうぶん
中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)、『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)がある。
<https://twitter.com/sun_koubun>

最終更新:2017/07/04 18:00
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