「佐藤秀峰さんには頭が上らない……」『やれたかも委員会』吉田貴司の屈辱の日々と、ウェブ漫画家としての生きる道
#本 #マンガ #インタビュー #北村ヂン
■『やれたかも委員会』は純愛!?
――『やれたかも委員会』の中身の話もしたいんですが、この漫画のフォーマットって、ツッコミのある『BOYS BE…』ですよね。
吉田 確かに。僕は『BOYS BE…』あんまり読んでないんですけど、そういう青春! 純愛!みたいなものをガッツリやりたいのに、照れ隠しでこういう形式で描いているのかも知れませんね。先日対談させていただいた小説家の保坂和志さんに「今、純愛をそのまま描くとバカだと思われるから、みんな避けるんだけど、この形だと読者も純愛を照れずに読めるよね」って言っていただいて、確かにそうかもなーって思いました。
――いろんな「やれたかも」な体験談が出てきますけど、吉田さん自身が一番好きな体験談はどれですか?
吉田 うーん、2話目の、ママさんバレーをやっている主婦ですかね……ああいう、女性からグイグイ来るタイプに弱いですね。自分からどう迫ったらいいのかわからない、っていうのもありますが。
――「あの時、自分から行ってればやれたのに……」みたいな後悔が、たくさんある?
吉田 20代の頃はデートが終わって家に帰ってから「何やってんだろー」って、延々と蛍光灯眺めるみたいな、そんなのばっかりでしたよ。いまだに全然女性との距離の取り方がわからないところはあります。例えば、仕事で知り合った女性とプライベートで食事に行く……なんてことになったら、どうしたらいいのかわからないですもん。ファミレスだとあまりにも味気ないですし、ガッツリ間接照明みたいなところだと「口説く気か?」と警戒されて変な空気になるじゃないですか……。普通にご飯を食べたい時は、どこに行くのが正解なんですか!?
――「やれるかも」という期待が100%なければ、喫茶店でいいですもんね。
吉田 僕は、普通にご飯を食べられればいいと思ってるんです。でも、もしも女性側がアリだったとしたら、それはそれで話が変わってくるというか……。別の問題が出てきますよね? もしかして、最低なこと言ってる気がしてきましたが……すみません。
――最新作では、初めて女性の体験談が出てきますが、そこでいきなり判定がゆるくなっている気がするんですが?
吉田 ゆるくなってますか? そうですか。特に自分では、そういう気持ちはなかったですが。女性が男性の体験談に対して「やれた」判定を出すことって、正直なかなかないと思うんですよ。女性のほうから「あの時やれたよ」って軽々しく言っちゃう作品なんか描いたら、性犯罪を助長しそうだし……。
――そんなこと心配しているんですか!
吉田 でも、作品を通して、女性の性欲についても無視はしたくないわけです。僕は男なので、しょせん男都合の漫画しか描けないんですが、ギリギリまで女性の気持ちを考慮できたら面白いんじゃないかと思って描いています。
もちろん、女性の体験談でも「やれたとはいえない」ケースも出てくると思います。女性からアピールしたとしても、男側がダメってケースがあるじゃないですか。特に10代男子って「付き合わないと、やっちゃいけない」とか考えてたりするんで。
――童貞相手だと、なかなか難しいですよね。
吉田 若い頃は「自分の中ルール」みたいなのが、やはり多い傾向がありますからね。
――今後の展開ですが、自分の好きなことを描いて、読みたい人が課金してくれればいいというスタイルを続けていくんでしょうか?
吉田 そういう方向に行きたいとは思っています。「吉田さんの漫画だったら買います」という人が1000人くらいいてくれたら、ちょいちょい貯蓄しながらやっていけば大丈夫かなと思うんですよ。とりあえず、今年いっぱいは、書籍の印税も入るし、電子印税も入るし、グッズを作ったりスタンプを作ったりもしようと思ってるんで、食べていけるかなと。『やれたかも委員会』の単行本は年内にもう1冊くらい出したいんですけど、それと同時に新企画も立ち上げて、noteで動かしていこうと考えています。
(取材・文=北村ヂン)
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