体罰、セクハラ、長時間拘束……生徒も顧問も悩まされる「ブラック部活」の実態
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一方、生徒だけでなく、教師の側もブラック部活に悩まされている。「課外活動」である部活動のために、土日も返上で働く教師は数多い。しかも、土日の練習に参加しても日当はわずか3,000円……。テストの採点や授業で使用するプリントの作成、報告書の作成など、ただでさえ「ブラック」といわれる勤務を行っている教師たちに、部活の負荷は重くのしかかる。本書では、顧問を断ろうとしても「この学校は全員顧問制」と認められず、練習時間を少なくしようとすれば、保護者から「練習を減らして、勝てなくなったらどうしてくれるんだ?」とクレームが飛ぶ事例が報告されている。そんな現状を変えるために、公立中学校に勤務する教師たちが練習時間の縮小を訴えるオンライン署名活動を開始すると2万8,000人以上の署名が集まった。教師にとっても、部活は耐え難いものとなっているのだ。
では、なぜ、ブラック部活が生み出されてしまうのだろうか?
私立校であれば、部活の成績の向上は、学校の知名度の向上や、寄付金の増加、入学者数の増加といった利益をもたらしてくれる。また、「子どもがプロになれるのではないか」あるいは「スポーツ推薦を獲得できるのではないか」という希望から、生徒たちの親が体罰などの暴力を容認したり、長時間練習を是認する姿勢が見えてくる。しかし、すでに最新のトレーニング理論では、体罰よりもモチベーションの向上のほうが、はるかに技術の向上をもたらすことが証明されている。また、06年に全国高校総体でサッカー部を優勝させた元県立広島観音高校顧問の畑喜美夫氏は、平日の練習をたった2日に制限しながら、チームを優勝に導いているのだ。そんな事例を知らず、「勝つためには仕方ない」「強くなるためには仕方ない」といった強迫観念に支配されてしまうことが、部活の「ブラック化」の一因となっているのだろう。
もちろん、青春の1ページとして思い出に残るだけでなく、部活動は学校教育において大きな役割を果たしている。学習指導要領では、部活動について、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環」と記されている。そんな部活動によって追い込まれ、取り返しのつかないケガをしたり命を落としてしまうような「ブラック化」は、絶対に阻止しなければならない。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])
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