卑屈、逆ギレ、責任転嫁……「今もバイトで怒られてる」サブカル界の新星・トリプルファイヤー吉田靖直とは?
#インタビュー
――(笑)。そもそも吉田さんは、子どもの頃から「人間としてのレベルが低い」感じだったのでしょうか?
吉田 うーん……小学生くらいの頃から、僕がどんなに真面目にやっていても、周りはニヤニヤして見ていました。そんな視線のせいで、自分は何をやっても滑稽に見えるんだと思うようになって、それに自分を寄せていくようになってしまったんです。だから、僕がこういう人間になった責任の一端は、周りの反応にもあると思っています。
――周囲の視線が今の吉田さんを作った(笑)。しかし、“サブカル界の新星”などと騒がれる今、ご本人の実感としてはいかがでしょうか?
吉田 幹が細い、という不安がありますね。本来の音楽活動でしっかりと認められ、活動の枝葉としてバラエティ番組に出るという形ならいいんですが、バンドとしての評価も知名度もまだまだですからね。
――奥田民生にしても電気グルーヴにしても、「面白い」と言われながら、しっかりと音楽的にも評価とセールスを上げていますね。
吉田 テレビを見ていても、何をやっているかわからない人っているじゃないですか? ホラン千秋とか。本職がなんなのか、よくわからないですよね。
――(笑)。
吉田 僕が知らないだけで、きっと本職があるのかもしれないですけど……(編注:ホラン千秋の本職は女優)。
――吉田さんの活躍から、トリプルファイヤーも徐々に注目を集め始めています。リソッドな演奏だけでなく、吉田さんが描く歌詞の独特な世界観が魅力になっていますね。
吉田 例えば、「トラックに轢かれた」っていう曲は、トラックに轢かれる曲なんですけど……。
――そのまんまの説明ですね……。
吉田 「40代なのに 20代に見えた トラックに轢かれた/一番自分に似合う髪形をよくわかっていた トラックに轢かれた」と、こだわりを持ってる人間がトラックに轢かれる瞬間を描いています。トラックに轢かれちゃえば、世間では素晴らしいとされるこだわりも、まったく無価値になるじゃないですか。
――そんな無価値を「トラックに轢かれた」という言葉で表現するのが、吉田さんの奥深さですね。
吉田 だって、トラックに轢かれている映像って面白くないですか?
――……。
吉田 ギャグマンガとかでトラックに轢かれたりするじゃないですか。そうすると、マジメに死んでるはずなのに、なんか面白い感じになっちゃうんです。
――では、そんな吉田さんの世界観は、どのようにして生み出されるんでしょうか?
吉田 歌詞を書く時は、難しい本を読んでから書くようにしています。例えば、ドストエフスキーやオーストリアの哲学者・ウィトゲンシュタインを読んでから書いたりしていますね。
――難解な小説や哲学書が「トラックに轢かれた」につながる……?
吉田 ドストエフスキーは、普通に生きていて見過ごされたり、世間では暗黙の了解で進んでいるようなことを書いています。僕も、自分で感じているはずなのに、いつの間にかスルーしてしまっているような感情や風景を表現したいんです。ただ、難しい言葉やシリアスな感じは出したくない。だから、くだらない言葉を意識的に使っています。そこは、お笑いや吉田戦車さんなどギャグ漫画の影響もあると思いますね。哲学書は一応読んでいますが、その時々で適当な場所をちょっとずつしか読まないので、全体的な意味はわかってないことが多いです。
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