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8.4%に再浮上した嵐・相葉雅紀『貴族探偵』推理の「弱さ」と、バカドラマとしての「強度」

8.4%に再浮上した嵐・相葉雅紀『貴族探偵』推理の「弱さ」と、バカドラマとしての「強度」の画像1フジテレビ系『貴族探偵』番組サイトより

 視聴率、上がりましたね。嵐・相葉雅紀主演の月9『貴族探偵』(フジテレビ系)第9話は、前回から1.4ポイント上昇して8.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)でした。

 今回は、麻耶雄嵩さんの原作『貴族探偵』(集英社文庫)から、傑作の呼び声高い短編「こうもり」が引用されました。ネット上でも麻耶さんファンを中心に「『こうもり』は読んだ方がいい」「次はすごいことになる」と放送前から話題になっていたので、今回の視聴率にはその影響もあったかもしれません。数字は低いより高いほうがいいことは間違いないので、とりあえずおめでとうございます。そんなわけで今回も振り返りです。長いよ。(前回までのレビューはこちらから

 さて、ジャニーズドラマであり、月9であり、原作がミステリーマニア向けの本格推理小説でもある『貴族探偵』は、視聴者によってさまざまな見方があると思います。極論を言えば「相葉ちゃんが1時間、流し目してるだけでいい」という人もいるだろうし、「月9なんだから胸キュンさせなきゃ許さない」という人もいるし、「フーダニットにおけるミスディレクションは厳密なアレがアレ」みたいな人もいるでしょう。

 今回の第9話は、特にそうした視聴者の属性によって評価が分かれる回だったように思います。なので、とりあえず書き手である私が、どういう立場からこの「こうもり回」を見たのかということから考えてみます。普段は単なる「どらまっ子」ですし、そんなこと考えないですけど、今回は考えさせられた回だった、ということで。

 私は『貴族探偵』のドラマ化が決まってから麻耶さんの名前を知ったような半可通でして、一読した感想は以前、第3話(記事参照)でも書いた通り、「あんまり好みじゃないな」というものでした。その「好みじゃない」という印象を深く抱かせたのが、この「こうもり」という短編だったのです。

「こうもり」は、叙述トリックに特化した小説でした。どんな叙述トリックかをわかりやすく説明するには、それこそ「こうもり」本編以上の文字量が必要になりそうなので割愛しますが、とにかく頭のネジが4~5本はブッ飛んでるんじゃないかという(4本か5本かは不明)、「なんでそんなことすんの!?」と言いたくなるようなトリックが採用されています。麻耶さんが、なんでそんなことをしたかといえば、「叙述トリック」という言葉に普段から馴染んでいるマニアにだけ向けて書いた作品だからです。日常的に本格激辛ラーメンを食べている人だけに向けて、「味わったことのないスコヴィル(辛さの単位)を食らえ!」と叫びながら放ったのが、「こうもり」だったのです。

 しかも麻耶さんは、このスコヴィルを際だたせるために、一見これを「凡庸なあっさりラーメン」に見えるような仕掛けを施しています。謎解きのアリバイに「犯人がそっくりさんを使った」という超ベタなトリックを用いたのです。第1話のレビュー(記事参照)で「強引な推理の踏み抜きが行われている」と書いたのは、これのことです。

 これにより、一般読者は「本格っていうわりに、別に普通だな美味しいけど」といった心境で読み進め、スープを飲み干したとき(叙述トリックが明かされたとき)になって「辛すぎだわ! なんでこんなことすんだよ!」と丼を放り投げることになるわけです。そして一部マニアだけが「ススススコヴィル!(叙叙叙叙述トリック!)」と絶頂に至ることになります。私は辛いものあんまり食べられませんし、そこまでの刺激は求めてませんので、「こうもり」を「ものすごい奇作」だとは思ったけれど、「傑作」とは思わなかったんです。

 ここまでが前置き。そういう立場からのお話です。

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