海外ドラマを牽引する売れっ子クリエーター! ライアン・マーフィの押さえておきたい代表作3選
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新作ドラマの数が急増しているアメリカTV界で、押しも押されもせぬ売れっ子がライアン・マーフィーだ。以前紹介した『アメリカン・ホラー・ストーリー』(参照記事)でアンソロジー・ドラマ人気に火をつけ、大御所女優ジェシカ・ラングを起用。監督を務めた映画『食べて、祈って、恋をして』に主演したジュリア・ロバーツと意気投合し、映画女優だった彼女を『ノーマル・ハート』でTV界に引っ張り出した辣腕ぶり。生存競争の激しい世界でアンソロジー・シリーズというひとつの潮流を生み出し、定着させた功績は大きいだろう。今、アメリカのドラマを見るなら彼の作品は外せない。なかでもまずは押さえておきたい、マーフィー作品をチョイスした。
彼がブレークしたきっかけとなった作品が、2009年にスタートした青春ミュージカル・コメディ『glee/グリー』だ。オハイオの田舎町にある高校を舞台に、スクール・カーストの最下層にいる負け犬キッズたちが、合唱部でその才能を発揮し、成長していく姿を描いていく本作。合唱と言ってもここで描かれるのはパフォーマンス重視のショウ・クワイアー。生徒を演じるのはブロードウェイ出身のリア・ミシェルなど実力派がそろい、本格的なパフォーマンスを披露する。今でこそミュージカル作品は人気だが、一昔前までミュージカルといえばダサいというイメージ。そんな負のイメージを塗り替える音楽的クオリティの高さに度肝を抜かれるドラマだ。
60年代から現代に至るまでのヒットナンバーや、ミュージカル・ソング、映画のテーマ曲など幅広い楽曲がチョイスされているため、高校が舞台の青春ドラマでありながら大人世代が見ても楽しめる。普通にサントラを買いたくなるほど“聴ける”楽曲が盛りだくさんだ。もちろん音楽だけでなく、コミカルでありながら、イジメ問題やジェンダー問題など社会風刺を盛り込み、決して説教臭くならずにポジティブなメッセージを発信している点がドラマとしても秀逸なところだ。周囲からバカにされても決して自分を曲げない生徒たちがまぶしく、その何かにひたむきに打ち込む姿に思わず自分の高校時代が懐かしくなる事必至だ。
『アメリカン・ホラー・ストーリー』がヒットして以来、次々とアンソロジー・シリーズを手掛けているマーフィー。なかでも評価が高いのが、実録犯罪ドラマ・シリーズ第1弾『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』だ。1994年に元妻とその友人を殺害した罪で起訴された元人気アメフト選手O・J・シンプソンの裁判と、その結果をドラマ化。実際に起こった事件なのでその結末はすでに周知だが、当時“世紀の裁判”といわれるほど全米が注目した事件で一体何が起こったのか、判決が下るまでをリアルに描き、結末が分かっていてもその緊迫感で引き込まれてしまう。実際この事件に関しては刑事と民事で判決結果が分かれており、そうしたグレーな部分が事件から20年以上が経過しても見る者の興味を引くのだろう。もっとも、ドラマは単なる興味本位にスキャンダルを煽るものではない。“世紀の裁判”に関わる事になった人たちのそれぞれの目線で、苦悩や葛藤が深く描かれ、それをキューバ・グッディング・ジュニアやジョン・トラボルタなど実力派俳優たちが迫真の演技で大熱演。この俳優陣のアンサンブルだけでも見る価値がある。この年の賞レースを席巻したのもうなずける渾身の1作だ。
ちなみに『アメリカン・ホラー・ストーリー』の最新シリーズでは、トランプ大統領を取り上げることが決まっている。今のロシア・ゲート疑惑で世間を騒がせている様子を見ると、『アメリカン・クライム・ストーリー』で取り上げるほうが合っているような気もするが、もはやトランプ政権はアメリカにとってホラー同然ということなのだろう。
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