答えは求めない――「禅寺密着」が可視化した、NHK『ドキュメント72時間』の独特な構造
#NHK
お寺で行われている修行の過酷さは、われわれには想像がつかない。宮城県仙台市にある福聚山 慈眼寺の住職・塩沼亮潤氏は「大峯千日回峰行」に入る時、師から「最低3回は生きるか死ぬかの瀬戸際を通過しなければいけない」と言われ、事実、死を覚悟するような瀬戸際を3度くぐり抜けたという。
一方で、昨今はカジュアルな形で開放されているお寺も少なくない。俗世間を離れ、禅寺修行に参加する現代人たち。自分自身と向き合う貴重な場としても機能しているのだ。
■サーティワンアイスクリームに“生きるありがたさ”を感じる女性
5月26日に放送された『ドキュメント72時間』(NHK)のテーマは「禅寺修行、始めてみました。」。京都府亀岡市にある「宝泉寺」では1泊数千円~という手軽な形で禅寺修行の受け入れを行っており、今回、番組は大型連休を利用して修行に訪れた参加者の3日間(72時間)に密着している。
宝泉寺では、禅の基本が学べる3泊4日のコースが人気だそう。この短い期間に基本を身に着けるのだから、締めるところは締めなければならない。修行体験へ入る前、お寺から参加者たちへ「下山日まで、つらいことがあっても、すべて修行と受け取ってやり遂げましょう」と注意事項が伝えられている。
そうして、まず始まったのは座禅。否応なしに場の空気は一変するが、15分で終了する。続いて1時間半の休憩タイムが設けられていたから、いささか拍子抜けしてしまった。初めての人でも無理なくこなせるよう、意図的にゆるめのスケジュールが組まれていたのだ。
ここで参加者たちに話を聞いてみると、元レースクイーンで、現在はフランスでフリーのカメラマンとして活動している女性は、禅寺修行に取り組んだきっかけを笑顔で語ってくれた。
「集団生活って、大人になってどうなんだろうって思いません? ……(番組スタッフに目をやって)会社に属されてるとちょっと思わないかもしれないですけど、私は個人で生きてる人間なので、どうなのかなと思って(ニコッ)」
千葉県から参加した舞台役者の女性は、修行5日目で家族に電話。ホームシックゆえに、母親の声を聞いて涙を流してしまった。
「声聞いて、泣いちゃいましたね(笑)。あー、やばい。また、きちゃいますね……」
岡山県から来た保育士の女性は、休憩時間を利用して、外のサーティワンアイスクリームへアイスを食べに行ったという。
「めっちゃおいしかったです(笑)。これが、ありがたいということなんですね……」
パッと見は朴訥とした感じのある男性、実は元ホストであった。月に数千万円稼いだこともある実績の持ち主だ。
「お金で遊んだりとかモノ買ったりするのも人より全然できたと思うんスけど、それもなんか飽きちゃう。あとは“無の境地”を手に入れたいなと、ちょっと(笑)」
ものすごくカジュアルな形で禅寺修行の受け入れが行われていることは、存分に伝わってきた。
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