お尻の痛さと、トイレへの不安と戦う6時間超えのバスの旅……日本最長距離「新宮特急」はやっぱりスゴかった!
#昼間たかし
■この吊り橋、舐めてかかると怖い!
そんな路線の中で、必ず寄りたい観光スポットが谷瀬の吊り橋。ここでは20分休憩時間が設けられているため、急げば渡って帰ってくることができるというわけだ。
次に、ここに来るのはいつのことかわからない。ここは渡っておくしかない。そう考えて橋に向かった筆者であるが、この橋はヤバい。日本一の長さは別に譲ったとはいえ、全長297メートル。川面からの高さは54メートルの吊り橋である。渡ろうとすると「20名以上は同時に渡らないで」の注意書きが。観光シーズンには見張りの人が出るのだろうが、この日は見ている人もおらず。突然、観光バスでもやってきてゾロゾロと渡り始めたら……などとネガティブなことを考えながら歩みを進める。
きっと、多くの人は最初の数十メートルは「なんだこんなものか」とタカをくくるだろう。敷かれている板切れは頼りなさそうだが、特段危険な感じはしないからだ。
だが、中央あたりに来ると「これ、ヤバいんじゃないか……」と、突然恐怖心が湧き上がってくる。中央に来ると、にわかに揺れが強くなってくるのである。「これは危険だ」と立ち止まれば、ふと見てしまう足元。明らかに高い! そして怖い! 最良の手段は、恐怖心が募る前に駆け抜けること。戻りも猛ダッシュすることである……。
そんなアクティビティも堪能できる路線。今回、十津川温泉を越え和歌山県まで乗り通したのは、筆者だけ。残りの乗客はすべて、十津川で下りてしまった。どうも普段から、乗り通しを目的としている観光客を除けば、こんなものらしい。行政からの補助がなければ運行が困難な路線であることは確かだろう。
とはいえ、6時間を超えて紀伊半島の秘境を越えていくという充実感はたまらない。何しろ、まだ都会の雰囲気のある大和八木駅を後に、十津川の峡谷を越えて、新宮に達すれば、そこは荒波が打ち寄せる太平洋。これだけで日本の広さというものを感じることができるはずだ。
6時間を超えて乗り通すことだけで、達成感を得られるこの路線。時間さえあれば、誰にでも挑戦できるから、一度は乗ってみてもよいだろう。ただ、トイレがないので水分補給だけは、よく考えて!!
(文=昼間たかし)
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