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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『SR』家族の絆が断てないIKKU

『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第7話 セーフティーネット/家族の絆が断てないIKKU

 最初は寺での規則正しい生活に慣れなかった「SHO-GUNG」とトーコだが、リズムに乗って掃除、洗濯、炊事に取り組むようになっていく。体が自然に動くようになってくると、気持ちがいい。「言葉は友達♪」を合い言葉に、IKKUたちは軽やかなラップが口から溢れ出してくる。壁に貼られた張り紙がクラブチッタでのライブまで、残り3日になったことを知らせている。

 と、ここでIKKUのスマホの着信音が鳴り、大問題が発覚! 電話を掛けてきたのはIKKUの妹・茉美(柳ゆり菜)からだった。

茉美「お兄ちゃん、どこにいるの? 今週の日曜は私の結婚式だからね。忘れてないよね?」

 妹からの電話に思わず絶句するIKKU。今週の日曜といえば、クラブチッタとバッティングしている。しかも、電話を代わった父親(斎藤暁)によれば「先方は京都のホテルを予約しくれているんだぞ」とのこと。

 えっ、妹の結婚式は埼玉でやるんじゃないの!? きっと埼玉の結婚式場で「SHO-GUNG」として一曲かましてから、カブラギ号に乗って川崎へ猛ダッシュで向かうことになるんだろうと予想していたのに。京都から川崎への移動はさすがに容易ではない。妹の結婚式のことを完全に失念していたIKKUは激しく動揺し、第7話はエンディングまで無気力化してしまう。シリーズ後半戦はコメディ展開でクラブチッタまでイッキに突っ走るのかと思いきや、どうやらそうではないらしい。

 座禅タイムは見逃せないシーンだった。第4話の雪(中村静香)、第6話のトーコの入浴シーンに続いて、今回はTOMの脳内妄想として、TOMの外人妻トリーシャ(コロウロレナ)が入浴姿を披露する。トリーシャは相変わらず、何語でしゃべっているのかよく分からない。MIGHTYは『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)で遺恨を残した「極悪鳥」のことがフラッシュバックする。MIGHTYが首都圏に戻るということは、「極悪鳥」とニアミスする危険度が高まるということでもある。「極悪鳥」もクライマックスに向かって「SHO-GUNG」の前に不気味に立ちはだかる存在になりそう。そしてIKKUは座禅しても精神統一できないどころか、映像化できないほど頭の中はカオス状態に陥っていた。

 座禅タイムが終わり、兄タケダ先輩から「翌朝には新しい曲を用意する」と告げられ、大喜びするTOMとMIGHTY。だが、やはりIKKUだけは浮かないまま。ここでようやくMIGHTYたちは、IKKUの妹の結婚式とライブが重なっていることを打ち明けられる。

MIGHTY「なんで言わなかったんだよ? これが最後だろ? ふざけんなよ!」

 IKKUは「忘れてた。ごめん……」と弱々しく答えるだけ。ここまで『SRサイタマノラッパー』シリーズを見続けてきたファンは「なんで?」と驚いてしまう。IKKUにとってはラップだけが生き甲斐で、「SHO-GUNG」の仲間がいちばん大切だったのではなかったのか? 埼玉での閉塞的な暮らしを憎んで、ラップにその想いを叩きつけてきたのではなかったのか? サングラスをしていないIKKUのその無防備で虚ろな表情は、「SHO-GUNG」としてクラブチッタのステージに立つことよりも妹の結婚式に出席することに心が傾いていることを伝えている。IKKUはもはや「SHO-GUNG」ではなく、加賀谷郁美に戻っていた。

 家族想いと言えば、聞こえはいい。だが、すごく嫌な言い方をすれば、クラブチッタのステージに立つことは一夜限りの打ち上げ花火。父親の命令に従って妹の結婚式に出席して家族としての最低限の役割を果たせば、IKKUはその後もニートとして実家で暮らし続けることができる。親が生きている間はその稼ぎや年金で食べさせてもらえ、親が死んだら実家を長男である自分のものにできる。埼玉の実家はなんだかんだ言っても、IKKUにとってどうしようもなく切り離すことのできないセーフティーネットなのだ。

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