他言語を学ぶとは新しい世界観を手に入れること。新時代の扉を開ける宇宙からの福音『メッセージ』
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娘を亡くした心の傷を負いながらも気丈に振る舞う言語学者役を、実力派女優エイミー・アダムスがさすがの好演。大小2体のヘプタポッドのことを「アボットとコステロ」と親しみを込めて呼び、交流を重ねていく姿は微笑ましくもある。そして何よりも、本作を撮ったのがヴィルヌーヴ監督であることが重要だろう。1989年にモントリオール理工科大学で女性嫌いの青年が女子大生14人を銃殺した実在の事件を再現した『静かなる叫び』(09)でヴィルヌーヴ監督はカナダ国内で注目を集め、中東紛争で女性や子どもたちが虐待されてきた歴史をドラマ化した『灼熱の魂』(10)がアカデミー賞外国語賞にノミネートされ、国際舞台へとジャンプアップした。
さらにハリウッドでは、幼児拉致監禁事件を題材にした『プリズナーズ』(13)、麻薬カルテルとFBI捜査官との壮絶な麻薬戦争を描いた『ボーダーライン』(15)と着実にキャリアを刻んできた。ヴィルヌーヴ監督は現代社会に渦巻くシリアスな問題から目をそむけることなく、激しいバイオレンスを交えて、リアルな作品に仕立ててきた。そんな禍々しい現実を見つめてきたヴィルヌーヴ監督が、本作ではヘプタポッドから学んだ新しい概念によってあらゆる問題を解決することを試みている。ヴィルヌーヴ監督がこれまで描いてきた悲劇の数々は、本作の主人公であるルイーズが目覚めたことで、すべて救われることになる。ルイーズがどのように目覚めたのかは、この記事を読んだあなた自身の目で劇場で確かめてみてほしい。
勝者と敗者に分ける二者択一の窮屈な世界から、もっと自由で広大な宇宙へ。ヴィルヌーヴ監督が撮った『メッセージ』は新しい世界への招待状となっている。
(文=長野辰次)
『メッセージ』
原作/テッド・チャン 脚色/エリック・ハイセラー 監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演/エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、マイケル・スタールバーグ、マーク・オブライエン
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 5月19日(金)より公開
http://www.message-movie.jp
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