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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.427

他言語を学ぶとは新しい世界観を手に入れること。新時代の扉を開ける宇宙からの福音『メッセージ』

他言語を学ぶとは新しい世界観を手に入れること。新時代の扉を開ける宇宙からの福音『メッセージ』の画像1これまで実在の社会問題を題材にしてきたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、新作『メッセージ』では問題の解決法を提示している。

 かつてアメリカ大陸はインディアンが自由を謳歌する楽園だったが、白人入植者たちの勘違いによって長い長い殺戮の歴史が始まった。インディアンには土地を所有するという概念がなく、白人入植者たちが土地を譲渡してもらう代わりに渡した銃やナイフをプレゼントだと思って喜んで受け取った。ところがインディアンがいつまでも土地から出ていかなかったため、契約違反だと怒った白人たちはインディアンの大量虐殺を始めた。人類はそんなコミュニケーションの行き違いによる悲劇を何度何度も繰り返してきた。『ブレードランナー2049』(10月公開)でも注目されるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF大作『メッセージ』(原題『ARRIVAL』)は、人類と地球外生命体とのファーストコンタクトを描いたもの。SFファン以外にも様々なインスピレーションを与えてくれる魅力に溢れた作品となっている。

『メッセージ』の主人公はひとりの女性言語学者。ルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)は別れた夫との間にひとり娘ハンナがいたが、病いによってハンナは若くしてこの世を去った。心にぽっかり空いた穴を埋めるべく言語学の研究に勤しんでいたルイーズのもとに、米軍大佐のウェバー(フォレスト・ウィテカー)が現われ、米軍の極秘調査に協力して欲しいと頼む。折しも世間は宇宙から飛来した巨大飛行体のニュースで大騒ぎとなっており、その宇宙人とのコミュニケーション方法をルイーズに考えてほしいという依頼だった。ウェバー大佐が持ってきた音声データだけでは、宇宙人が何をしゃべっているのか見当もつかない。エイミーは宇宙人と直接会うこと以外に彼らの言語を理解する方法はないと進言する。

 ルイーズはウェバー大佐、さらに数学者のイアン(ジェレミー・レナー)と共に大平原に浮かぶ巨大な宇宙船へと近づく。緊張で震えるルイーズたちの前に、ついに七本脚の宇宙人“ヘプタポッド”が出現する。「HUMAN(私たちは人間)」と書いた手描きのボードに、身ぶり手ぶりを交え、2体のヘプタポッドと懸命にコミュニケーションを図るルイーズ。高い知能を有するヘプタポッドは、円形状の不思議なデザインを描いて応える。表意文字ならぬ、表義文字が彼らの伝達手段だった。未知なる文明を持つ彼らの言語は、一度では到底理解することは不可能。だが、ルイーズはコミュニケーションを重ね、分析することで少しずつ彼らの言葉を理解し、それと同時に今まで感じたことのない不思議な感覚を身に付けることになる。

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