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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『SR』東北を旅する意味

『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第6話 1シーンに凝縮されたIKKUらが東北を旅する意味

 ヒップホップ寺で修業中の「五福星」と呼ばれるスキンヘッドの小僧たちと火花を散らし、ラップバトルとなる「SHO-GUNG」。

TOM「欲しいのはおニューなトラックだけ。タケダ先輩に会いたいだけだ♪」

 必死に韻を踏んで「五福星」と競り合う「SHO-GUNG」だったが、「五福星」のカルト教団ばりの頑強さに、大苦戦。IKKUは二の句も継げず、四苦八苦……!

 ここで入江監督のメジャー進出第1作『日々ロック』(14)に主演した野村周平が登場。「五福星」たちの兄弟子になる青鬼(野村周平)のとりなしで、「SHO-GUNG」は竹田寺を開山した兄タケダ(上鈴木伯周)との面会を許される。病気で亡くなったヤング・タケダ先輩と同じように体が弱そうな兄タケダ。IKKUたちはライブ用に曲を作ってほしいと頭を下げるが、兄タケダの声は弟以上に小さくて返事がまるで聞き取れない。「お前らのラップ聞いた。ショボい。もう曲も作ってないし。お前ら帰れ。他の道、歩め」と物凄く小っちゃい声でディスられてしまう。

MIGHTY「俺らのラップがショボいのは分かってんだよ。でも1回、1回だけステージに立たねぇと終われねぇんだよ!」

 目の前にようやく見えてきた夢を諦めることができないMIGHTYが悲痛な叫び声を上げる。クラブチッタのステージに立つという目標は、もうIKKU、TOM、MIGHTYたち3人だけの夢ではなくなっている。無限の才能を持ちながらヤング・タケダ先輩は、ショボい「SHO-GUNG」に新曲を残して、あの世へと旅立っていった。遠野でカッパの神様への奉納ライブを一緒にやった溝口(松尾論)はラップの道を断念して、地元で生きることを選択した。夢を叶えることができなかった様々な人たちの想いを「SHO-GUNG」は背負って、ここ福島まで辿り着いた。何をやっても中途半端だった3人は今、初めて熱く燃えている。

 一方、トーコに誘われて、カブラギは近くの湯治場へ。一時は生きる希望を完全に喪失していたカブラギだったが、露天風呂に入ってリフレッシュし、トーコいる女湯を覗き見するまでに心も下半身も元気に回復する。ドスケベ、上等!

 震災のあった東北を旅する『マイクの細道』だが、こんなエロい役が許されるのは福島出身の怪優・皆川猿時だからこそ。『あまちゃん』の磯野先生のみならず、『あまちゃん』のチーフディレクターを務めた井上剛監督が撮った『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』(15)でもコメディリリーフとして活躍した。エロモードに入った彼の100kg近いメタボな体型が、生きる喜びに満ち溢れている。入浴姿を覗かれたトーコだが、自分が誰かの役に立っていることがちょっとうれしい。いつも苦虫を噛み潰したような表情をしていたトーコも、すっかり自然な笑顔を見せるようになった。

 そして、埼玉のIKKUの実家では、妹・茉美(柳ゆり菜)がもうすぐ結婚するという話題でもちきり。音信不通な不肖の兄IKKUは、完全に『男はつらいよ』の寅さん状態。多分、妹の結婚式とクラブチッタのライブは日程が重なっているに違いない。竹田寺で1週間のお試し修業に挑戦することになったIKKUたちは、兄タケダに新曲を作ってもらうことができるのか。そしてダブルブッキングしているだろう妹の結婚式とクラブチッタのライブのスケージュルをうまく縫うことができるのか。クラブチッタという名のネクストステージへの道のりは、まだまだ遠い!
(文=長野辰次)

最終更新:2017/05/15 17:00
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