トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 上映時間4時間超『いぬむこいり』

鈴木清順、若松孝二の“遺伝子”を継ぐ男の咆哮!! 上映時間4時間超のパンクオペラ『いぬむこいり』

鈴木清順、若松孝二の遺伝子を継ぐ男の咆哮!! 上映時間4時間超のパンクオペラ『いぬむこいり』の画像4キョラ族の女王を演じた緑魔子。アングラ演劇界に君臨したスター女優の貫禄は健在!

■混沌化していくこれからの時代への祈り

『いぬむこいり』の最終舞台となる「イモレ島」では、米兵や武器商人たちが入り交じっての戦乱が絶えない。実際のロケ地は鹿児島県だが、第二次世界大戦時に日本で唯一の地上戦が繰り広げられた沖縄の過去の悲劇を彷彿させると同時に、軍事基地の整備が進むこれからの沖縄を幻視したかのようでもある。

「沖縄にあれだけ米軍基地があるという現実があるわけで、何かしら物語を考える上でインスパイアされていると思います。物語の中ではキョラ族とナマ族がずっと対立しているんですが、これはイスラエルとパレスチナの関係を投影したもの。また、島から鉱石が採れ、地下資源をめぐっても争うことになる。経済・宗教・政治とすべてが交じった欲望の島で、戦争が絶えず続いている。いわば世界の縮図です。そんな世界の縮図を舞台にして、おかしな革命家たちが出てきて大騒ぎし、梓は巻き込まれていく。そして、その中で自分にとっての大切な“宝物”とは何かを探すことになる。ソビエト連邦が崩壊し、EUも解体に向かうかもしれない。これからの東アジアもどうなるか分からない。そんな状況の中で自分たちはどんな社会を築いていくべきなのか、どうやって生きていけばいいのか、また幸せの在り方も変わってくるはず。混沌としたこれからの時代に対する祈りみたいなものを、『いぬむこいり』には込めたつもりです」

 片嶋監督は若松孝二監督の『寝盗られ宗介』(92)の助監督を務め、また鈴木清順監督の『ピストルオペラ』(01)と『オペレッタ狸御殿』(05)のプロデューサーも経験している。パンクな作風は、2人の巨匠からの影響も強くあるようだ。

「若松孝二監督と鈴木清順監督の影響を感じるとはよく言われますが、うれしく思う反面、ちょっと複雑な気持ちですね(笑)。若松さんからは映画づくりのあり方や姿勢を学んだんですが、実は僕はそれほど若松映画のファンというわけではありません。現場で若松さんを見ていても、これでいいのかなあと疑問に思っていたこともありました。反面教師ですね(苦笑)。でも、なんだかんだ言われながらも、晩年に『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)を完成させた。『実録・連合赤軍』は本当にすごい作品。逆に鈴木清順監督に対しては作品のスタイルから美的センスまで、すべて尊敬していました。清順監督の作品は若い頃に撮った『悪太郎』(63)、『春婦伝』(65)、『けんかえれじい』(66)なども素晴しいし、『ツィゴイネルワイゼン』(80)と『陽炎座』(81)は大傑作。清順監督本人は喰えないジジイでしたが、最後の2本の作品に関わることができてラッキーでした。清順監督は政治的な発言はいっさいしなかったけれど、作品はどれも反権威的な匂いのするものばかり。清順さんもまた、映画で何かしらの革命を起こそうと本気で考えていた人だったと思います」

 映画界の革命家たちの薫陶を受けた片嶋監督が全力を投じた破天荒なパンク映画『いぬむこいり』は5月13日(土)より開幕する。
(取材・文=長野辰次)

鈴木清順、若松孝二の遺伝子を継ぐ男の咆哮!! 上映時間4時間超のパンクオペラ『いぬむこいり』の画像5

『いぬむこいり』
監督/片嶋一貴 脚本/中野太、片嶋一貴 撮影/たむらまさき
出演/有森也実、武藤昭平、江口のりこ、尚玄、笠井薫明、山根和馬、韓英恵、
ベンガル、PANTA、緑魔子、石橋蓮司、柄本明 
配給/太秦 R15 5月13日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
(c)2016INUMUKOIRI PROJECT
http://dogsugar.co.jp/inumuko.html

最終更新:2017/05/11 18:43
123
ページ上部へ戻る

配給映画