嵐・相葉雅紀主演『貴族探偵』多重の叙述トリックを処理したフジテレビの“原作改変”がスゴすぎる!?
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原作の読者をドラマ視聴者に置き換えて、そのままトリックを忠実に映像化するなら、死体を画面に映すわけにはいきません。しかし、殺人事件を扱うドラマで死体が映らなければ、視聴者は当然「そこに何か仕掛けがある」と思うに決まってるんです。それはちょっと不自然すぎる、というドラマ制作の常識に則って、「死体を女だと思わせる」という第1のトリックを潔く切り捨てました。この話の最大の面白ポイントが使えなくなったわけです。
それでもこの第4話が成立したのは、「幣もとりあへず」が多重トリック作品だからでした。第1の叙述トリックを切り捨てても、名前の入れ替えトリックが残されているので、女探偵と貴族探偵の多重推理という楽しさは十分に表現できるわけです。
しかし、ただ捨てれば成立するわけではありません。まず単純な話として、小説の読者は第1のトリックで「うわ死体は男かよ騙された!」の後に、「うわ田名部優は赤川和美かよ騙された!」という驚きが訪れ、これによって「二重のヤツかよ、おもしれーな!」という満足を得るわけですが、ドラマでは第1のトリックを捨てているので「うわ田名部優は赤川和美かよ!」の一点勝負で視聴者を納得させなければならない。半分になってしまった原作の魅力を、オリジナルで創作しなければならなくなりました。
今回は、このドラマオリジナルの改変部分に、たいへん感心してしまったんです。主な改編は以下の2点です。まず、原作では小屋に押し込められていた死体が、湯船から脱衣所に引きずられていたこと。もうひとつは、原作では電波が圏外だった携帯電話が、ドラマでは女将によって没収されていたことです。画面に映る景色としては、些細な変化でしょう。一見すれば、どっちでもいいよ、という程度の改変にしか見えない。原作読者に対しても「あんまり変えてないな」と思わせておいて、がっつりこの2つの改変点に推理の根拠を噛ませてくることで、謎解きに広がりを出しているのです。結果、第1の叙述トリックがなくても普通に面白いミステリーに仕上がっている。事件の内容と謎の解明は、よりわかりやすく、すっきりと提示されている。見事なものです。
ほかにも、貴族探偵が途中で入れ替わりに気付いていたくだりを入れる意味だったり、田名部優(女)から頼まれて入れ替わりに応じた赤川和美(男)に、ちょっとした設定がプラスされることで行動原理から不自然さが取り除かれたりで、原作より格段に視聴者の間口を広げていると思います。
そういうすごく難しい仕事を、すごく頭を使って、すごく誠実にやり遂げながら、松重豊を風呂に入れたり座敷わらしを映り込ませて話題作りも怠らない。そういうわけで、今回の『貴族探偵』って、かなり全方位的に全力で頑張ってると思うんですけど、視聴率あんまり上がらないですね。あと、あんまりこういうことを書くとアレなんですけど、フジテレビの月9をいくら絶賛しても、記事のPVも上がらないんですよねえ……。仕方ないよねえ、面白いんだものねえ……。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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