ゲームをプレイする悦びを描く『ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』の冒険
#テレビ裏ガイド #てれびのスキマ
息子が楽しそうにプレイしているのを見て、父も見よう見まねでプレイするようになった。
「光生、これ、なかなか面白いな」
ゲームは父と息子の共通言語になった。
だが、ある日、父が仕事から疲れて帰ってきたときに、光生は喜々としてゲームの話をしてしまう。
「ゲームばかりせんと、ちょっとは勉強せえ」
そこから、2人は心を開いた会話をすることができなくなったのだ。
しかし今、2人はかつて一緒に遊んだ『FF』の世界で、再び出会った。
その時、「インディ」を名乗る父は、初心者にとっては難敵のモンスターに襲われていた。
「このままでは父さんが死んでしまう!」
インディの命の危機に、マイディーはすかさず加勢し、救ったのだ。
「大丈夫でしたか?」
尋ねるマイディーに、インディは沈黙したまま見つめ合う。やがて、なぜかマイディーの周りを走りだす。戸惑うマイディーを尻目に、インディはそのまま走り去ってしまうのだ。
まだどうやって会話していいかわからない父がなんとか感謝を伝えようとしたが、それができず、結局逃げてしまったのだ。
どうすればよかったのかを聞きに来た父に息子が説明すると、父はしみじみと言うのだ。
「このゲーム、なかなか楽しい」
ドラマは、このように現実の世界とゲームの世界(エオルゼア)を行き来する。エオルゼアの様子には、実際のプレイ画面が使われている。先のインディが逃げてしまうシーンも、ゲーム画面特有の動きのチグハグさが、おかしみを生んでいた。
これまでもゲームをモチーフにしたドラマはあったが、ここまで「ゲームをプレイする悦び」に焦点を当てて、そのゲームの特性を利用し、それをストーリーや映像に組み込んだ作品は例がないのではないだろうか。
その実現に至るまでは、さまざまな苦労があったことが想像できる。実際にその顛末は、原作者のブログ「一撃確殺SS日記」で、「光のぴぃさん」と題し、連載されていた。
たとえば、最初の脚本案。もちろん原作ブログそのままをドラマ化したのでは、オンラインゲームをもともと好きな人は楽しめても、筆者のようなそうでない者は楽しめない。地上波で放送するドラマである以上、それではダメなことは明らかだ。原作ではほとんど描かれていない主人公の背景や、原作では主人公と父と母だけしか出てこない登場人物の追加などは必要不可欠な要素だった。
もちろん、それは原作者も納得していたが、最初に出された脚本案は、受け入れがたいものだった。主人公は引きこもり、父は末期がん。それを知った主人公が「光のお父さん計画」を立てる。旅の仲間たちもアニメオタクやBLマニアなど、テレビ的に誇張されたオタク像。人生経験豊富な父が、そんなネット依存した若者たちを更生、社会復帰させていくというものだった。
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