深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.425
嫌な予感しかしない東京で見つけたささやかな灯り 石井裕也監督『夜はいつでも最高密度の青色だ』
2017/05/06 19:00
#映画 #パンドラ映画館
ガールズバーで出逢っていた美香(石橋静河)と慎二だが、しばらくして喪服姿で再会することになる。
カメラマン・鎌苅洋一が映し出した東京の夜景は、まるで深い海のようだ。慎二の吸うタバコの火が、美香が手にしたスマホの灯りが、発光する深海魚のようにゆらりゆらりと淡い光を放っている。そんな暗い深海の底で、2人は出逢うことができた。ただの偶然の出逢いが、2人の間でコミュニケーションが始まることで色鮮やかな奇跡へと変色を果たしていく。
「嫌な予感がする」と何度も口にしていた慎二だが、美香と一緒に過ごすようになり、「何が起きてもおかしくない」と言葉のニュアンスが少しだけ変わっていく。嫌なことはこれからも起きるかもしれないけど、逆にすごくいいことだって起きるかもしれない。片目でしか世界を眺めることができなかった慎二だが、慎二の傍らを美香が歩くことで、視界が大きく開けていく。新しいステージに向けて走り出した石井裕也監督、撮影現場で何度もペチャンコになりながらも最後までガッツを見せた石橋静河、そんな石橋を支えるように安定した芝居を見せた池松壮亮、ストリートシンガー役の野嵜好美ら、本作に関わったスタッフ&キャストのこれからが楽しみだ。
(文=長野辰次)
映画『夜はいつでも最高密度の青色だ』
原作/最果タヒ 監督・脚本/石井裕也
出演/石橋静河、池松壮亮、佐藤玲、三浦貴大、ポール・マグサリン、市川実日子、松田龍平、田中哲也
配給/東京テアトル リトルモア
5月13日(土)より新宿ピカデリー、渋谷ユーロスペースにて先行公開
5月27日(土)より全国ロードショー
(c)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
http://www.yozora-movie.com
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