“エリカ様”からついに脱却! 『母になる』で沢尻エリカが見せつけた、女優としての“幅”
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同世代の女優を集めた沢尻会を開いているというウワサ話が週刊誌で書かれたことで、エリカ様と揶揄されるようになり、嫌いな女優の1位になることも珍しくなくなった。
その後、女優としての仕事はめっきりなくなり、2008年にハイパーメディアクリエイターの高城剛と結婚(13年に離婚)。
並の女優なら、すでに終わっていただろう。しかし、ここから沢尻の逆襲が始まる。
「別に」騒動から5年後の12年。沢尻は、ゴシップまみれとなった自分自身を連想させる全身整形美女の転落を描いた、岡崎京子の漫画作品の映画化『ヘルタースケルター』のヒロイン・りりこを演じた。
劇中ではヌードや激しい濡れ場も披露し、話題を総ナメ。ゴシップ・クィーンのりりこの人生をなぞるように、モンスター女優・エリカ様として、沢尻は復活する。
しかし、エリカ様のイメージが強烈すぎて、年相応の普通の女性を演じても、エリカ様のイメージがチラついてしまう。そのため、普通のドラマでは使いづらい存在となってしまった。
『ヘルタースケルター』の後、沢尻が演じたのは、突然、謎の死を遂げた魔性の女といわれた美人女性実業家の『悪女について』(TBS系)、イジメをものともせずに、ファッション業界でのし上がっていく強い女性の『ファースト・クラス』(フジテレビ系)など、世間が思うエリカ様のイメージをなぞるような作品ばかりだった。
映画『新宿スワン』のドラッグ中毒で破滅するキャバ嬢も含めて、画面の中で大暴れするエリカ様は面白かったが、見世物小屋のバケモノを見ているような痛々しさがあった。あえてそのイメージを引き受けた沢尻には感服したが、やがて飽きられて、女優としてすり切れてしまうのではないかと懸念していた。
風向きが変わったように見えたのは、ドラマ『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)で演じた女性ライターの明日香役からだろう。
主人公を助ける強気の女性というイメージは相変わらずだが、エリカ様成分は少なめで、久々に普通の女性を違和感なく演じていた。
そして本作『母になる』では、久しぶりにエリカ様ではない沢尻が楽しめる作品となっている。沢尻の芝居は抑制的で、顔が少し老け込んでいるためか、今までのような華やかさはない。しかし、今まで以上にたくましさを内に秘めた母親を演じている。
おそらく本作に出演したことで、沢尻は女優として完全復活を果たすだろう。
平凡な女性を演じる時は“沢尻”、過激なキャラクターを演じる時は“エリカ様”の二刀流を身につけた沢尻エリカは、向かうところ敵なしである。
(文=成馬零一)
●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
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