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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > フジ『貴族探偵』の楽しみ方

主役は嵐・相葉雅紀ではなく「推理」そのもの……フジテレビ月9『貴族探偵』の楽しみ方

 これは、原作に何かを足したり引いたりということではありません。もともと当代きっての推理作家が脳汁を噴出させながら組み上げた精緻な事件設計を一度解体し、その本質を変容させないまま再構築するという作業にフジテレビが挑み、成功させているのです。今回の事件、原作ではドローンを使ったトリックは存在しませんし、殺された作家が「絶対に北枕で寝ない」というギミックは、原作よりも効果的に、人物の心情描写を補強する形で生かされています。

 今回も見ていない人はFODで見てほしいので、事件のあらすじは記しませんが、もちろん、2017年に放送されるテレビドラマとして、手放しでホメられるところばかりではありません。推理が主役であるこのドラマは、視聴者にある程度の情報を「記憶する」ことを強要します。第1話は5人、第2話は4人、少なくとも、謎解きが始まるクライマックス前までに容疑者のプロフィールを理解していないと、謎解きが始まっても何が行われているのか把握することができません。本格ミステリーは“ながら見”に向かないんです。集中していないとクソつまらんのです。Twitterやらで実況する文字を打ち込んでいるうちに、伏線を見逃してしまうかもしれない。本来なら月9じゃなく、テレビ朝日系の木9あたりで地味にやったほうが、視聴者層には刺さるのかもしれない。

 でも、だからこそ、この本格ミステリーを月9に持ち込んで、必死になって若者向けに、ポップにしようと頑張りながら、推理にもトコトン真面目に向き合っている『貴族探偵』というドラマを愛さずにはいられないのです。

 これ、最後までうまくいったら偉業だと思うんですよ。ここ1年余り、わたしはここでずっと月9のレビューを書かせていただいています。毎週数千字、累計では数万字にわたって、主に「フジはもうダメだ」「視聴者をナメるのもいいかげんにしろ」「やる気がないならやめちまえ」という論調だったはずです。

 その月9が、偉業を成し遂げようとしている。なんとも興奮してしまいますし、「あとでもう1回、今週の月9を見よう」とか「来週はあの事件を、月9がどんな解釈で描くのだろう」とか期待しちゃうなんて、ちょっと想像もしていなかった事態です。

 ちなみに視聴率は前回から3.5ポイント下げて8.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だそうです。うーん、せちがらいね!
(文=どらまっ子AKIちゃん)

最終更新:2017/04/25 20:00
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