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日刊サイゾー トップ > その他  > 『映画クレしん 宇宙人シリリ』レビュー
【おたぽる】

【劇場アニメレビュー】新作『クレしん』はロードムービー!?  キャスト・スタッフの安定感がすごい『映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』

 その中でシリリは、その名にふさわしいキャラ造型で、最初はどことなく地球人を侮蔑しているのだが、旅を始める過程でその姿を周囲に見られてはまずいので、しんちゃんのお尻に隠れながら移動することになる。これがまた彼にとって妙に居心地の良い場所だったようで、しかも旅の途中でとーちゃんたちとはぐれてしまったしんちゃんとシリリは、ふたりで何とか旅を続けていく(子どもたちだけで、そんなアホな? といったツッコミは不要。ちゃんとそこにも落としどころは用意されている)。

そんなこんなで、ふたりの間には友情が芽生えていくのだが、ドタバタなくだらなさがてんこもりの中、その心のふれあいの描出に怠りがないので、非常に見ていてスムーズ。いわゆる笑いの中に感動がある『映画クレヨンしんちゃん』ワールドにふさわしい展開となっていくのであった。

 ようやくシリリの父親のもとにたどりついた野原一家およびシリリにどのような運命が待ち受けているかは見てのお楽しみとして(まあ、大方想像はつくとは思うが)、シリリの父親の声を演じる雨上がり決死隊の宮迫博之は、相方の蛍原徹とともに『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(02)以来の参加ではあるが、今回は重さと軽さ、硬軟双方を巧みに使い分ける好演で大役を乗り切っている。

 それにしても『クレヨンしんちゃん』とお尻は切っても切れない関係性にあるが、ここまでシリというキーワードにこだわられると、もはや呆れるよりほかになく、しかしその脱力感こそがしんちゃん映画の醍醐味でもあるのだろうと、改めて痛感せざるを得なくなるのも事実ではある。

 また、だからこそ最初に述べたように、四半世紀も続く長寿シリーズの割にそんな重みも貫録も微塵も感じさせない飄々とした軽やかな味わいが醸し出されているのだろう。

 あ、書き忘れていた。今回はカスカベ防衛隊の出番はさほどないなと思いこんでいたら、実はびっくり仰天の思わぬところで大活躍してくれるのも大いにカタルシスがあり、やはりわかってらっしゃる方々が作ってくださっているなあと、ニンマリしてしまった次第である。
(文・増當竜也)

最終更新:2017/04/17 07:15
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