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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.420

恋愛において“ナカメ作戦”は果たして有効か? 星野源主演の劇場アニメ『夜は短し歩けよ乙女』

恋愛においてナカメ作戦は果たして有効か? 星野源主演の劇場アニメ『夜は短し歩けよ乙女』の画像1オモチロイことが大好きな黒髪の乙女(声:花澤香菜)は、夜の京都で様々な変人奇人たちと遭遇する。

 純愛とストーカー行為は紙一重の違いであり、相手に受け入れられれば運命の恋として成就し、拒絶されれば変質者、もしくは犯罪者の烙印を押されることになる。日夜SMプレイに励んでいた熱愛カップルの場合、どちらか一方の恋愛感情が萎えてしまうと、その途端にSMプレイは忌わしいドメスティックバイオレンスと化してしまう。この世で恋愛ほど不条理なものはない。それでも、世の多くの人たちはそんな不条理な状況に自分が陥ることを願ってやまない。森見登美彦の人気小説を湯浅政明監督が劇場アニメーション化した『夜は短し歩けよ乙女』は、思い出すだけで恥ずかしさのあまり身悶えしてしまう、一方通行な恋愛あるあるストーリーが描かれている。

 舞台は森見作品でおなじみの京都。原作小説の装画にもなっている中村佑介が描いた、ちょっとレトロな雰囲気を漂わせた美少女・黒髪の乙女(声:花澤香菜)が夜の京都をずんずんと歩き通す。大学で同じサークルに所属する先輩(声:星野源)は、そんな乙女に出逢ったときから一方的に想いを寄せ、“ナカメ作戦”を実行中だ。ナカメ作戦とは「なるべく彼女の目にとまるようにする作戦」のコードネーム。木屋町で開かれた春の宴会では、ひとり夜の先斗町へと繰り出していく乙女の後を追い掛けるも、次々と邪魔が入って思うように乙女に近づけない。下鴨神社で開かれる「下鴨納涼古本まつり」に乙女が出掛けるという情報をキャッチすれば、乙女がお目当ての本に手を伸ばした瞬間に自分も手を出し、紳士的に乙女に譲るという姑息な手段を考える。さらに秋の学園祭では、野外演劇の舞台に急遽出演することになった乙女の相手役の座を狙って野獣のように目を光らせる。すべては偶然を装って、自分こそが運命の男だと乙女の潜在意識に訴え掛けるためである。そんな先輩の苦労を乙女は露知らず、「また逢いましたね」とニコッと笑って、ずんずんずんと歩き去っていく。

 森見原作&湯浅監督の顔合わせは、2010年にオンエアされたTVシリーズ『四畳半神話大系』(フジテレビ系)に続いての2度目。京都市左京区ならではのロケーション、森見作品特有のシュールさ、湯浅監督の鬼才ぶりが『四畳半神話大系』では見事に融合したことから、同作のスタッフを再び召集して『夜は短し歩けよ乙女』を劇場アニメーション化することが決まった。『四畳半神話大系』の登場人物そっくりなキャラクターも現われ、『夜は短し歩けよ乙女』と『四畳半神話大系』はパラレルワールド的な関係であることを思わせる。

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