トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『山田カンヌ』崩壊と再生と……

『山田孝之のカンヌ映画祭』最終話 映画『映画 山田孝之3D』に至る崩壊と再生と、それから芦田愛菜と……

 山田は、父親が鹿児島市内で経営するダイニングバーを訪れる。ビールで乾杯。山田は更地の写真を父親に見せながら「すごい、いいとこだな、と思った」と言う。

 父親が、山田の机は持ち出していたという。その引き出しから出てきたのは、卒業アルバムや卒業文集。「みんなの夢」というページには「カバディーの選手 山田孝之」とあった。

「ずっとふざけてんな、俺」

 通知表に並ぶのは「1」と「2」ばかり。遅刻は中3の2学期だけで41日を数えている。

「中学のアルバムはないんだよなぁ」

 中学時代にスカウトされた山田は、卒業を前に上京している。

 翌日、山田は父親を釣りに誘った。ほんの1週間前まで、山下敦弘を言葉の限り罵倒したり、芦田愛菜に刺すような視線で糾弾されたり、全身全霊で映画の現場に身を捧げていた姿は、そこにはない。桜島をバックに並ぶ親子は、ごく普通の地元住人に見える。

「生まれたときのこととか、覚えてる?」

 ダイニングバーに場所を移し、山田は父に話を聞くことにした。どこにでもある、ひとりの子どもの出生エピソードが語られる。

 山田はこのとき、父親が30年にわたって小説を書いては、新人賞に応募していたことを初めて知る。

「実験的な生き方が好きだったんだろうね」

 そう振り返る父親に、「破滅的な感じの?」と山田が問いかける。

「まあ、実験がうまくいけば破滅にはいかないんだけど」

123
ページ上部へ戻る

配給映画