現代の「トキワ荘」はユートピアか無間地獄か!? 創作の苦しみを描く守屋文雄初監督作『まんが島』
#映画
構想10年の末に初監督作を完成させた守屋監督に、製作内情について1時間ほど話を聞いた。
守屋文雄「日大芸術学部では沖ちゃん(沖田監督)と同年卒業でしたが、彼は一留して、僕は二浪しているから、同期生とは微妙に異なるんです(笑)。『鍋と友達』(02)などの彼の自主映画に、僕は演者として気楽に参加してきましたが、彼は短編を着実に撮り続け、初めての商業映画『南極料理人』で脚光を浴びることになった。今から僕が懸命に走っても一生追いつけません。入江くんも大学の後輩ですが、彼にももう追いつけない(苦笑)。彼らの作品を観た直後には『よし、見てろよ!』とは思うんですが、自分はその気持ちを抱えたままでは、仕事である脚本が書けないんです。自分を空っぽにしないと書けない。『まんが島』のアイデアは30歳ぐらいからあったものです。一緒にふたり芝居をやっていたこともあり、水澤に出てもらうのは決まっていて、そういえば2人で漫画家を目指していたなと、子どもの頃の思い出をもとに脚本を書き始めました。完成まで、ずいぶん時間が掛かってしまいましたね。製作費は『キツツキと雨』で脚本料をもらい、そのお金を撮影代に回したんです。沖田監督には世話になってます」
守屋演じる漫画家は島へ移住する前、アパートの家賃を滞納し続けていたことを編集者(川瀬陽太)の口から明かされる。実はこのエピソード、守屋監督自身の実体験を投影したもの。守屋監督は家賃3万8,000円の風呂なしアパートに15年ほど暮らしていたが、家賃を催促する大家さんの足音に怯えながら『まんが島』のシナリオの改稿を重ねてきた。無人島でサバイバルライフを続ける漫画家たちの鬼気迫る暮らしぶりは、守屋監督の実生活と重なり合う。
守屋「毎日が必死でした。脚本料が振り込まれると、なぜかその日に限って大家さんが家賃の取り立てに現われるんです。なぜ振込み日が分かったのか……。大家さんも必死だったんだと思います。毎日が真剣勝負でした。そのアパートは先日取り壊されたんですが、長年住んだこちらとしても思い入れが深く、記念に鍵をもらっておこうと思ったんです。でも、その鍵も大家さんに取り上げられました。何も俺に渡したくなかったんだと思います。代わりにこっそり網戸をもらってきました。次の家に無かったんで」
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