戦争が起きれば“防波堤”となるのはどこなのか? 三上智恵監督の最新ドキュメンタリー『標的の島』
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「本当は宮古のパーントゥや石垣のアンガマといった昔から島に伝わる伝統文化を中心にしたドキュメンタリーにしたかったんですが、やはり辺野古や高江の問題も放っておけませんし、軍事評論家によるエアシーバトル構想の解説もあり、かなり雑多な内容になったかもしれません。山里節子さんは石垣では有名な方で、節子さんの言葉と歌はとても印象的ですよね。宮古や石垣は目には見えない精神文化が先祖代々受け継がれてきている土地なんです。かつては沖縄本島も日本本土そうだったはず。沖縄の島々では“弥勒世果報(みるくゆがふ)”という言葉が祭りの場などでよく使われます。今はつらい世の中でも、神の力を借りていつか豊かな世の中になるよね。あなたと私は今は対立しているけど、いつかみんなで幸せに暮らせる時代になるよね、という意味合いで使われているものなんです」(三上監督)
先祖が代々汗を流し、体を張って守ってきた土地に感謝し、自分の子や孫たち子孫にもきちんと残し伝えていきたい。それゆえ島で暮らす人たちの多くは、島を軍事要塞化し、戦争を呼び寄せる事態に異議を唱える。弥勒世果報が訪れることを祈り、一人ひとりがそれぞれ小さな防波堤となれば、戦火を煽る状況を防ぐこともできるはず。第3の防波堤は映画を観ている自分自身であることを本作は気づかせてくれる。
(文=長野辰次)
『標的の島 風かたか』
監督・ナレーション/三上智恵 プロデューサー/橋本佳子、木下繁貴
撮影監督/平田守 音楽プロデューサー/上地正昭
配給/東風 3月11日より沖縄・桜坂劇場 3月25日(土)より東京・ポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー
http://hyotekinoshima.com
(c)「標的の島 風かたか」製作委員会
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