トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 古谷経衡が暴く“意識高い系”の正体
『「意識高い系」の研究』発売記念インタビュー

「君たちはどんなに頑張ってもリア充にはなれない」意識高い系は、なぜ面倒くさい? 文筆家・古谷経衡が暴く“承認欲求の怪物”の正体

「君たちはどんなに頑張ってもリア充にはなれない」意識高い系は、なぜ面倒くさい? 文筆家・古谷経衡が暴く承認欲求の怪物の正体の画像1

 SNSに毎日投稿し、土日は仲間たちとバーベキュー、せっせと自己啓発セミナーに足繁く通う若者を「意識高い系」と呼ぶ。時に炎上する彼ら「意識高い系」は、どこからやってきたのか。若手文筆家・古谷経衡が、このたび『「意識高い系」の研究』(文春新書)を上梓した。自身も「意識高い系」の一人だと自認する古谷に、世間をにぎわす彼らの実態について話を聞いてみた。

「君たちはどんなに頑張ってもリア充にはなれない」意識高い系は、なぜ面倒くさい? 文筆家・古谷経衡が暴く承認欲求の怪物の正体の画像2

――意識高い系は、「イライラする若者」ぐらいの捉えられ方だと思うんですけど、今回はそういうことではなくて、「こういう思考回路を持っている人」たちだと枠を広げたところが新鮮だと思いました。リア充になれない人たちが、意識高い系になるということですが、リア充にも意識高い系にもなれない人たちもいると思うんですね。

古谷経衡(以下、古谷) リア充でも意識高い系でもない人というのは、“見えない”んだと思うんです。要するに、本人も諦めちゃっているし、諦めているが故に承認される必要もない。たまたま知り合いにそういう人がいれば、見えますけど、大多数はそういう自己アピールをしないと思うので。ぶっちゃけて言うと、それが普通だと思うんですけどね。数的にも多いと思います。だって、普通は、インスタグラムなんかに毎日写真を上げないわけですから。20代とか30代でくくったときに、物言わぬ彼らのほうがマジョリティだと思うんです。彼らが意識高い系にならない理由は、そこまでものすごいコンプレックスを持っているわけではないからです。意識高い系が若者の実態だ、みたいなのは、上の世代によくある錯覚で、意識高い系の方がマイノリティでしょうね。

――NHK『ねほりんぱほりん』で、大阪に住んでいるのに“六本木に勤めるOL“を偽装する「キラキラ系女子」が登場して驚いたんですけど、これも「意識高い系」になるんでしょうか?

古谷 僕も見たことありますよ、「この(SNSにアップしている)画像、海外のホテル予約サイトのあれでしょ」って。よくその嘘写真がネット上で検証されたりしていてね。偽装・偽証しておるんだったら、それはもはやキラキラ女子とか意識高い系ですらなくて、別のメンタルの問題なのではないかと思います。意識高い系によくある「バーベキュー行きました」アピールって、一応実際に行っているわけですから。大阪に住んでいるのに、六本木でOLしている設定って、全部嘘なワケですよね。詐術を弄しておるわけだ。 盛ることもしてないですよね、だって盛る基礎が0なんだから。10を14にしたり、10を17にしたりとか盛ることは、意識高い系の中ではよくあることですけど。あとは、自撮りの中からいいところ(奇跡の一枚)しかアップロードしなかったりだとか。日常生活や交友の良いところだけを針小棒大にアピールするのがキラキラ女子=意識高い系で、元々の事実を改ざんして詐術を弄するのは……また別次元ですね。

――0に50を掛けるのは、意識高い系ではないということですね。

古谷 0に何を掛けても0ですからね(笑)。

――偽物のブランド品を販売して逮捕された、「ばびろんまつこ」のように、法に抵触する行為が問題となっています。あれを見たときに、意識高い系は遠い世界の話ではなく、誰にとっても身近な問題なんだと思いました。

古谷 根本として、人間は他者から承認されたい気持ちが普遍的にある。仮にそれがリア充だとしても、薄いでしょうけど誰でも皆にあるものです。その中で“承認欲求の怪物”になったのが意識高い系。“ここではないどこかで羽ばたきたい”という欲求が全世界のある種の思春期の若者たちにあるのと同じように、たぶん承認欲求を根絶するのは不可能だと思うんです。でも、その欲求は少なくなっていった方が楽ですよね。だって、意識高い系はその承認欲求と対になった自己アピールが故に、生活水準を背伸びまでするから、それを維持できなくなって犯罪まで手を伸ばすのです。(ばびろんまつこの例=詐欺・商標法違反)。承認欲求の怪物、意識高い系は、根絶はできないけど、軽減させていくことはできます。もしかしたら僕も、ばびろんまつこのように九州の田舎に生まれて、ジャパネットたかたに入社して、都内でOLして、そこでも承認欲が満たされず悶々としていたら、もしかすると彼女のようになっていたかもしれない。だから、僕も同族なんです。半分否定はするけど、いなくなったほうがいいと言ってしまうのは酷。意識高い系は人間に普遍的にある承認欲求が肥大化しただけの存在なので、根っこのところはある意味凡庸で小心者なのです。意識高い系はその自己アピールのウザさ故に、ネット上で目立つから「意識高い系www」みたいなやり口で嘲笑されるわけですよね。

12
ページ上部へ戻る

配給映画