セーフティネットが取り外された恐怖の現実世界! 下流層の叫び『わたしは、ダニエル・ブレイク』
#映画 #パンドラ映画館
何とかオンライン登録を済ませ、就職活動にも取り組んだダニエルだったが、訪問先からの「うちの職場で、そのキャリアを活かしてほしい」という電話を断らなくてはならないのが心苦しかった。生活保護を受けるために、労働者としての自尊心はズタズタに傷つけられていく。それでも我慢して再申請をするが、しばらくして届いた通知書の結果内容は前回とまったく同じだった。長年マジメに働いてきたものの、もはや自分は社会の不要品なのか。落ち込んだダニエルはアパートの自室に引きこもり、外出をしなくなってしまう。
そんなある日、ダニエルのアパートの扉をノックする音が聞こえてきた。ケイティの娘デイジーだった。「ダニエル、あなたは私たち家族を助けてくれたわ。お願い、今度は私にあなたの助けにならせてちょうだい」。ちょっと前までフードバンクにいたことを学校の同級生にからかわれて泣いていたデイジーが、しばらく見ない間に精神的にすっかり大人へと成長していた。ダニエルは閉ざしていた扉をようやく開ける。無気力の谷に転げ落ちそうになっていた彼にとって、こんなにも頼りになる命綱はなかった。
(文=長野辰次)
『わたしは、ダニエル・ブレイク』
監督/ケン・ローチ 脚本/ポール・ラヴァティ
出演/デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズ、ブリアナ・シャン、ディラン・フィリップ・マキアナン、ケイト・ラッター
配給/ロングライド 3月18日(土)よりヒューマントラスト有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(c) Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,British Broadcasting Corporation, France 2 Cinema and The British Film Institute 2016
http://danielblake.jp
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