「さっさと帰りたい」TBS系『クレイジージャーニー』で話題の洞窟探検家・吉田勝次が覗いた“地下世界”とは
#インタビュー
人気紀行テレビ番組『クレイジージャーニー』(TBS系)で、ダウンタウン松本人志に「変態ですよね。ある意味尊敬してますよ」と言わしめた洞窟探検家・吉田勝次。踏破した洞窟は1,000以上。日常のすべてを洞窟探検に費やし、“人類未踏”の洞窟の魅力に取り憑かれた吉田は、この度『洞窟ばか すきあらば、前人未踏の洞窟探検』(扶桑社)を上梓した。隙間さえあれば、所構わず頭を突っ込む変人を突き動かすのは一体なんなのか? 本人に話を聞いてみた。
――『クレイジージャーニー』にご出演されたときに、吉田さんが「なんでみんなやらないんだろう」っておっしゃっていましたね。『洞窟ばか』を読むと、そう言いたくなる気持ちがわかります。RPGゲームによくあるような、ダンジョン探索をそのまま現実でやっているような感覚かもしれませんね。
吉田勝次(以下、吉田) なんだったかなあ……ドラクエ? やったことないですけど、そういう洞窟の場面があるらしいんですよね。それで、若い人から連絡をもらって連れて行ったことがありますよ、何回か。ふとリアルな洞窟ってどんなのかなって気になって、検索したら僕のことを見つけたみたいで。
――20代後半から洞窟探検を始めたということですが、初めて洞窟に入った時の気持ちはどんなものでしたか?
吉田 先輩が連れて行ってくれたんですけど、ものすごいスピードで前に行っちゃうんですよ。俺置き去りじゃん!? みたいな。「うわ! こんなところ入っていた!」と思うような狭いところをスルッとすり抜けて消えちゃうわけですよ。たぶん、どこかで待っていてくれていると思うんですけど、こっちは怖いじゃないですか、初めてだし。無我夢中で。進むと急に狭いところから大きいところにパッと出たりして、「わーっすごい!」って感動したり。要するに自分が行ったものしか見れないんですよ、景色が。もう本当にドキドキワクワクの連続で、ファーストインパクトがそれだから、強烈だったんですよね。自分の頭の中がパーって開けた感じ。
――運命の女性に出会ったようだったと、著書の中では言っていますね。
吉田 まあ、女の子の方がいいけどね(笑)。で、それが続いているんですよ。ドキドキワクワクが色褪せないというか。色褪せないというより、洞窟ごとに違うし。例えば、自分で見つけた洞窟ですごいものを見たら、これを最初に見つけたのは自分だって、その場に居合わせたことに感謝できる。実際に行って、見つけた人にしかわからないですけど、もうやめられないですよ。その衝撃を受けてしまうと。都会に戻れば、いろんな遊びがいっぱいあるし、そんな大変な思いしなくても楽しめると思うんですけど、一回衝撃受けちゃうとやっぱりそれも大事なんですよ。たしかに、実社会に戻ってきて、おいしいものを食べたり、友だちと遊んだり、楽しいことはいっぱいあるんだけど、それがないとダメ! みたいな。主軸なんです、洞窟が。洞窟の合間に、普通の人がやることをやればいい。
――もう、切っても切れない関係ですね。
吉田 そう。切っても切れない。それがあるからこそ、自分の世界が広がるんですね。でも、行っている間のストレスもあるんですよ。出発する前から行きたくない、本当は。僕は洞窟のガイドもやっていますから、一般の人を連れて行くこともありますが、そうするとね、入ると「すごい! すごい!」って「すごい」を何百回とみんな口に出して言うんです。「すごい」しか言えないんですよ、非日常だから。それなのに、連れて行った人たちが、一番喜ぶ顔を見せるのはどこかって言われたら、洞窟から出た瞬間なんです。何千人と見てきましたが、やっぱり出た瞬間ですね、キモは。
――探検なのに“出る”瞬間がキモ!?
吉田 出る瞬間っていうのは、洞窟のなかで新しい場所を見つけたあとだから、いろいろこみ上げてくるんです。すごい買い物をしたあとに「買っちゃったぞ!」って気が高ぶるみたいな。例えば僕らだったら撮ってきた写真とか、見つけた洞窟の情報とか、お土産満載で帰ってくるんですよ。今度は早く家に着いて広げたいじゃないですか。よく「洞窟に帰っていくんでしょ」って言われがちなんですけど、違います。さっさと帰りたい。だんだん洞窟の出口に近づいてきて、これ以上登らなくていいんだってなったときに、帰って来た感があるというか。一番感動するっていうか、なんとも言えない気分ですね。
――二度と行きたくない洞窟ってありますか?
吉田 辛かったのは、岩塩の中にできた塩の洞窟。塩だから、いるだけで肌がヒリヒリするんですよ。中は32度もあって、暑くて熱中症にもなったし。頭痛を抱えながら進みましたね。でも、二度と行きたくないかって言ったら、もう一回行って写真を撮りたいですね。
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