「文化庁メディア芸術祭」で個人情報漏洩? 広報委託先業者が別業務に流用
3月に第20回目となる受賞作発表が予定されている、文化庁メディア芸術祭。毎年、話題となった作品が選出され注目を集めるこの催しで、個人情報の漏洩が発覚した。
広報を担当する業者が個人情報を持ち出し、まったく別のクライアントから受注した宣伝業務に流用していたのである。
広報担当として得た個人情報を不正に利用したのは、千代田区にある「hilo Press」。同社のサイトに記された情報によれば、設立は2010年。文化庁メディア芸術祭をはじめ、美術展を中心に広報を担当している。会社登記はなく、代表の鎌倉かおる氏をはじめとする数人のスタッフで運営される個人事務所のようだ。
「hilo Press」は、2012年以降に文化庁メディア芸術祭の広報を担当。そこで取材申込みや授賞式の際の受付などで得た個人情報を持ち出したとみられる。
文化庁メディア芸術祭は、文化庁が公益財団法人画像情報教育振興協会(CG-ARTS協会)に業務を委託して運営。事務局は中央区にあるCG-ARTS協会に設置され、広報業務の委託を受けた「hilo Press」は「文化庁メディア芸術祭事務局 広報担当」として業務にあたっている。
つまり、そこに集まる各種媒体からの取材申込みのメール、ライター・記者の名刺は、文化庁メディア芸術祭の取材のためのもの。それを持ち出し、まったく別の業務に流用することは、個人情報保護法18条の目的外使用に該当するのではないか。
「メディア芸術祭の取材申込みで連絡先を入手しているということは『連絡先』を『本人』ではなく『第三者』から取得したことになります。この『第三者』が、『本人』から、外部へ『連絡先』を開示する許可を得ているのかどうか。この取得方法自体も問題になる可能性があります。そして、予め『本人』から『利用目的』についての同意をもらってないのであれば、そもそも、『目的外利用』ですらなく、もともとが『不正、違法な利用』となるのではないかと思います」(弁護士法人 ALG&Associates 山岸純弁護士の見解)。
「hilo Press」による不正が明らかになったのは、昨年4月頃。筆者の住所宛に「ルーヴル美術館特別展 LOUVRE No.9 ~漫画、9番目の芸術~」の案内が送付されたのである。この案内自体、封入されていたのは、取材依頼などではなくリーフレットと、素材の貸し出し依頼書のひな形。そして連絡先として「hilo Press」が記されているだけのものであった。
別の取材で関係のできた広報担当者から、新たな取材依頼というのは、よくあるもの。
通例「こういうものなので、ぜひ~」など、依頼文が同封されているものだ。けれども「hilo Press」が発送したそれは、一切存在しなかった。
この時は気にも留めていなかったのだが、7月になり、ある出来事がきっかけで「hilo Press」が、個人情報を流用しているのではないかという疑惑を深めた。そして、文化庁への情報公開請求による契約関係の調査などを経て、今回の取材に至ったのである。
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