ぼくらはみんな『アイヒマンの後継者』だった!? 平凡な市民の残酷さを明るみにした不快な実験結果
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イェール大学で行なわれた実験では白衣を着た男性だったが、権威を持つ人間から命令されれば過半数の人々が虐待行為に加担することが明らかとなった。白人男性だけに限らず、女性の場合でも違う人種の場合でもほぼ同じ結果となった。この実験結果は学界のみならず、世界中に大きな波紋を起こす。ミルグラム博士の元上司は「君の実験は人を不快にする」と侮蔑し、学生からは「被験者を騙した詐欺まがいの実験」と罵られる。人間の真実の姿を暴いたことでミルグラム博士は有名になったものの、毀誉褒貶の人生を歩むことになる。
ミルグラム博士を演じたのはピーター・サースガード。『マグニフィセント・セブン』(16)の悪役など助演でいい味を出す演技派俳優だが、彼の演技キャリアの中で強く印象に残っているが、リーアム・ニーソン主演の実録映画『愛についてのキンゼイ・レポート』(04)。セックス研究の第一人者であるキンゼイ博士(リーアム・ニーソン)の助手に扮し、性の奥深さを探求するためにキンゼイ博士とベッドで同性愛に励むシーンを生々しく演じてみせた。研究にのめり込んでいく姿は本作と通じるものがある。ミルグラム博士の研究に理解を示す妻サシャには、『シザーハンズ』(90)でハサミ男と恋に陥るヒロインを演じたウィノナ・ライダー。ハリウッドのメインストリームからは外れていった彼女だが、実在するダーウィン賞を題材にした『ダーウィン・アワード』(06)ではバカな死に方をして、人類の進化に貢献した人たちを訪ねて回る保険調査員を演じている。奇妙な実験をドラマ化した本作に、相応しいキャスティングだといえそうだ。実験の途中で「非人道的な実験には協力できない」と毅然とした態度で退席する被験者を演じたのは、2016年に事故で亡くなった若手俳優のアントン・イェルチン。現在公開中の主演映画『グリーンルーム』(15)ではナオナチと戦うパンクロッカーを熱演しているアントンが、本作で1シーンながら自分の意思を貫く市民を演じているのも感慨深い。
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